Dream(HP)
□試合のあとに
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すり傷に泥まみれ、汗のせいでへばり付く髪。
砂かホコリか泥か、何がなにやら。とにかく汚れている。
どうしようか。どうしようもない。帰ってシャワーを浴びるだけだ。
ただ、全然そんな気になれない。
「あ」
気付いたときには膝から崩れ落ちていた。ついに足から力が抜けたらしい。
――情けねえお姿ですわね、お姉さん。
そんな独り言も口に出せず、唇の端だけを上げて笑う。
落ち着こうとしても荒い息しかできないのだ。喋るのなんてまだまだ無理。
まるで余裕のない様子を堂々公開しているようで、みっともなかった。
ちりちりと、胸の辺りを負の感情が圧迫している。
こんなものか。
この程度か、わたしは。
あのゴールまで、いったいどれだけ距離があるのだろう。
だからといって、また走れるのか私は?
こんなに力いっぱい走って届かなかったのに、
これ以上走れるのか?
もし走れなかったら、どうする?
――もういやだ。
それ以上考えたくない。
思わず逃げるように目をつぶって、
――駄目、逃げるのはだめだ。今はただ気弱になってるだけ。きっとそうだ。
なんとか自分を叱咤して、目を開く。
唐突に黒が目に飛び込んできた。
――黒?
何だろうと思う間もなく、
「見事なご活躍でしたな」
低い声が降ってきた。
***