Dream(HP)
□Restaurant Dinner
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機嫌よくさせるだけさせておいて、私は今日最大の疑問を何気なく聞いてみた。
「で、誰にフラれたんですか」
「フラれてはおらん。言っただろう」
「じゃあどのストレスによるヤケ酒ですか」
「ヤケ酒から離れろ」
スネイプは苦々しく言ったが、顔が赤いからいつもの怖さが出ない。
「だって、今日はスネイプ先生からのお呼び出しですよ?」
あのスリザリンびいきのセブルス・スネイプが、卒業したとはいえグリフィンドール生だった私を呼び付け、
『今日一日、付き合え』
と言ったのだ。
紛れもなく。
日本を離れて久々に、地震を警戒した。
避難訓練が懐かしくなった。
「知り合いが例外なく多忙だったんですか。それとも誰からも分け隔てなく嫌われてるんですか…あ、そうかすいません」
はっと気付いて私は謝った。
「…知り合い自体がめちゃめちゃ少ないんですね……」
「コーリ、お前のその皮肉だけはスリザリンに入るに値するな」
「ありがとうございます」
「褒めてはおらん」
酔っ払いおやじは今の応酬で酔いが醒めてきたらしい。
つまらなそうな顔になるとボトルを持ち上げ、最後の一滴までグラスに注いだ。
「これは、勢いづけだ」
「さすがのスネイプ先生でも、お酒の力借りなきゃ勢いつかないんですか?」
「なかなかの難問でな。ここ数年、苦戦している」
眉を寄せて呟く。苦戦は本当のようだ。
「前進する気配がまるでない。まったく、今日は誕生日だというのに」
「誕生日?誰の?」
「我輩だ。他に誰がいる」
ワインの表面を眺めていた目がちらり、こちらを見やる。
スネイプはそれきり黙りこみ、しばらくしてまた唐突にグラスをあおった。
上下する白い喉がなんだか危なっかしく思えて、私は目をそらしてしまった。