Dream(HP)2
□てわたしの話
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そのプレゼントはピンクとオレンジのやわらかそうな紙にゆったり包まれ、アクセントとして金色のリボンが結ばれていた。
華やかな包みの中を推測するのは簡単。
昨日が何の日かを知っている日本人ならば、一日遅れだとしても、女性の贈るチョコレートには特別な意味があることを知っている。
彼はイギリス人であるが、身近な日本人にその知識を吹き込まれていたので、その意味合いを理解しているつもりだった。
まさかその日本人当人が、自分にそれをよこすとは思ってもみなかったのだが。
「…あのー…」
彼女は口を開いた。
「いらないですよねえ」
「いりませんな」
即答であった。
レイは眉をくにゃりと八の字に寄せた。
「そうですよねえ。甘いものお好きじゃなさそうですもんねえ」
「いや、そ…」
そういう問題ではない、と言おうとして、口をつぐむ。
『ではどういう問題ですか』と聞かれた場合、気恥ずかしい説明を自らしなければならない羽目になると思ったからだった。
「いやー私も、どうかと思ったんですよ。でもどうしてもやりたくなっちゃって、お菓子作り」
彼女は困ったように笑う。
「私って影響されやすいんだーって思いました。周りのみんなが作ってるのが楽しそうに見えるんですよ。で、チョコ作るでしょ、作ったらラッピングも凝りたくなって」
「出来上がったのがこれだと」
「はい」
ただ作りたかったからなのだという。
本気で言っているのだろうか。
いや、恥ずかしさを隠すための言い訳かもしれない。
どちらにせよ、面倒に首を突っ込むような馬鹿をしたくはない。
自分は受け取らない、彼はそう決めていた。
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