Dream(HP)2

□Oh,my Cherish
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 必要以上に強がる、自分を大きく見せたがる。
 思春期という年齢的なものだけではなく、彼は小さいときからずっとそうだ。


 だから今。
 彼の目がどんな色をしているか、私には想像がつく。
 まあ大忙しで、彼の座っているソファを見る暇すらないのだが。


「大事な任務だ、僕にしか遂行できない!」


 嫌でも聞こえるような大きな声だ。
 私以外の誰かが聞いたらどうするのか。


「この僕をご指名くださったんだ。ようやく活躍できるときが来た!」 


 誰が指名したのか、どんな任務なのか。
 それを言わないまま、彼はさんざん自慢する。
 まあ、大方予想はつく。彼とは生まれたときから一緒なのだから。


「もう少し喜んだらどうなんだ、レイ」
「喜んでますとも」


 ようやく私は、手にしていた布巾を置いた。
 調度品の手入れが一通り済んだのだ。
 毎年これが終わってからでないと、ホグワーツに向かう気にはなれない。


「でもお休みに帰れないなんてねえ」
「忙しいんだ、いろいろ準備が必要なんだ」
「お辛くなったら、いつでもお話しくださいね」
「お前に手伝わせるほど軽い任務じゃない」
「一人じゃ駄目だと思ったら、助けを求めるんですよ」
「馬鹿いうな、そんなにヤワじゃない」
「危なくなったらご自分の命が最優先ですよ」
「お前は任務をなんだと思ってるんだ?」
「決意が揺らいだ時には、一緒に帰ってきましょうね」
「帰れるはずがないだろう!馬鹿にするな!」

 どん、と大きな音がした。
 応接テーブルに足を投げ出したのだろう。
 行儀が悪いと注意しようとしたが、まあ奥様も外出中だ、これぐらいは見逃してあげようか。


「レイ、お前は僕に甘すぎるんだ!」

 彼は不満そうに言葉を続けた。
 世話係が甘くて何が不満なのだろう。


「大体、家はともかく、寮でまで僕にべったりする必要はないじゃないか。いつまでも子供じゃないんだぞ」
「だって私にとって坊ちゃんは、いつまでも大事な方ですから」
「坊ちゃんと言うな!」
「坊ちゃんは坊ちゃんでしょう」
「だから甘いっていうんだ…いい加減にしろ」


 大きなため息が聞こえた。
 いつもこんな感じで、私の粘り勝ちだ。
 だってもう16年ですよ、今更呼び方変えろったってねえ。


 ただ、今日の坊ちゃんは、少し違った。



「言っておくけど、さっきの話、嘘じゃないからな」
「誰も嘘なんて言ってませんよ」
「じゃあ、どうして頷いてくれないんだ」
「だってあんまり突然で」
「突然だからって真剣じゃないとは限らないだろう。どこまで馬鹿なんだお前は!」


 不機嫌丸出しで彼はわめく。
 色気も何もあったもんじゃない。




「約束しろ。この使命を成功させたら、お前は僕のものになるんだ」




  
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