Dream(HP)2

□ロストフィクション
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 そう、思い返してみれば、あれは新学期が始まったその日だった。

 中庭に人だかりをみつけ、私は何気なく覗いてみたのだ。
 取り巻きの中心で、男が校舎への入り口の階段に腰かけていた。
 形よく脚を組んで、手元の紙一枚一枚になにか書きこんでいる。

 下を向いていても彼の顔が整っているだろうことは分かった。
 ターコイズブルーのローブの上で、ブロンドの髪が光に透けて輝いている。

 まるで絵のようだ、と思った。
 誰かが思い描いた様式美をそのままなぞったような光景。


 やがて羽根ペンが動きを止め、顔が上がった。
 周囲の人たちを見渡し、少し離れて立っていた私に目をとめる。

 彼はにっこり笑って、こう言った。




「やあ、こんにちは。サインですね?」




 白い歯の隙間から出てきたのは、思ったより…なんというか、

 軽い声だった。



 覚悟もなにもあったものじゃない。

 その瞬間、1年間の私の幸せは終わりを告げたのだ。


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