Dream(HP)2

□シャンメリー
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「……」
「……」

「え、あたし日付間違えました?」

 沈黙に耐え切れなかったのはレイの方だった。

「間違えてはいない」
「じゃあいいじゃないですか」

 顔の曇りが晴れ、にっこりと笑う。
 乾杯、という声とともに、ガラスのぶつかる小気味よい音が鳴った。

 スネイプはというと、不満げにただ座っている。グラスに手もつけていない。
 したがって、置かれたグラスに彼女が勝手にグラスを合わせた形である。
 テーブルに並べられたカトラリーにも使われた様子はなく、まるできれいなままだった。

「どうしたんですか?まさか祝われたの初めてとか」
「確かに多くはないが」
「だと思いました」

 ほっとけ。
 と思ったが、スネイプは声に出さなかった。

 そもそも、祝うだとかの問題ではない。
 TPOだとか、祝ってもらう関係にないとか、そういう方面の問題である。

 ここはホルマリン漬けが壁面にずらりと居並ぶ薬学研究室だ。
 いくらテーブルの体裁を整えようが、

「わざわざこんなところで物を食おうと考えるか?普通」
「ほおー、まさか先生から『普通』なんて言葉を聞くとは思いませんでしたー」
「お前の口から『遠慮』という言葉が出てくるよりは珍しくないと思いますがね」

 いくら嫌味を投げかけようが、レイはにこにこと話を続ける。

「最後にお祝いされたのっていつですか?」
「覚えておらん。はるか昔だ」
「じゃあ誰に?」


 彼の脳裏をほんの一瞬。


 鮮やかな赤がかすめていった。



 それを追いやるように、ゆっくりと目を閉じ、開く。

「…友人だ」

 眉間が知らずに寄っていた。


 レイは真剣な面持ちになった。
 力が入った声で、質問する。



「…それは実在する友人ですか」
「そんなところで水増しするか。馬鹿者」

 別の意味合いで眉の皺が三割増した。


 * * *
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