Dream(HP)2
□おわりのパスティーシュ
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「何をしている」
その一言だけで、わかった。
つま先しか見えない相手に返事をした。
「…起き上がれなくて」
湿った草むらにうつ伏せている。
そんな自分の状況を、笑うべきだろうか。笑うべきだ。いっそ笑え笑ってくれ。
…そんなことを望める相手では、もちろんなかった。
ならば自分がと思ったが、顔がこわばって笑えない。
代わりに目を細めてみた。
それをどう取ったものか、問い掛けはさらに続く。
「楽しいかね?ホグワーツから何十キロと離れたこの地で、鼻から地面に突っ伏して?」
「…いえ、あまり」
この姿勢を楽しめるような貴重な人材がいるならばご紹介いただきたい。
真上から、それはもう大きなため息が聞こえた。
…なんでしょうね、この緊張感は。
授業なんかで、自分が彼の思い通りになってないと分かるがゆえに感じるプレッシャー、あれとまったく同じものを今感じてますね、私。
「君の頭には複雑すぎたようだから、遠回しにせず言ってやろう。なぜこんなところにいる」
「わかりませぇん」
あ、やべ。
今おなかに力入んなかった。
しかも発声がぐだぐだなら、その後の回答もぐだぐだである。
「えっと、学校出たら、なんか追っかけられて、だーって逃げてて、気がついたらこんな感じで」
「終業式後に死喰い人に追いかけられ、姿くらましで逃亡して、ここで力尽きたと」
「…よく分かりましたね」
自分で言っておいて何ですが。
「しかし中途半端な場所に来たものだ。だからこそ目を逃れたとも言えるが」
私の賛辞にも取り合わず、低い声は淡々と続けた。
「ホグワーツに戻れば逃げようもあったはずだが、そうしなかったのは何か目的でも」
「………」
「たった今気づいたかのような顔ですな」
ええ。
だって、たった今気づきました。
「生き延びた奇跡に感謝することだな。ミス・コーリ」
「おっしゃる通りです。…スネイプ先生」
あの地下牢の暗い床を響かせていたであろう黒いつま先に、私は言った。
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