Dream(HP)2

□要求と説得
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 それは、唐突な質問から始まった。

「ねえ父さん、父さんって私のこと愛してくれてるわよね」
「もちろんだ」

 スネイプはカップを持ち上げた。
 レイが娘でなければ、誰にも心を許さないように見える彼がこんなお茶の時間を持つことはなかっただろう。

「溺愛のレベルよね」
「正直に言うとな」

 この似つかわしくもないお茶会を毎日続けるのも、レイが喜んでくれればこそだ。
 彼が力を入れて説明すると、少女はにっこりと笑った。
 そしてはっきりと要求した。


「なら、約束守って」


 約束という単語を聞いて、ふとスネイプの頭に過去が通り過ぎる。


『しょうらいわたしをおよめさんにするなら、ムスメになってあげてもいいわ』


 彼女の後見人となるために結んだ最初の約束だった。

 レイは両親が死んでも傍を離れようとせず、そうやってだだをこねていたのだ。
 スネイプが頷いたときの呆気にとられた顔を思い出すと、今でも口元に笑みが浮かぶ。

――よりによって1番可能性の低いものを思い出すとは。
 さて、今日は何を買わされるのかね?

 ほほえましい気分で、スネイプはゆったりと聞き返した。


「何だね、約束とは」
「お嫁さんにしてくれるのよね」

 ガチャンっ!


 失礼、と一言言い、スネイプはカップをソーサーから持ち上げる。幸いどちらも割れてはいない。
 それから改めて優雅に口に運んだ。

「…聞き間違えたようだ、もう一度」

「そろそろプロポーズお願いできる?」

 ぶふぉッ!!


「やだー父さん、いったん口に入れたもの出すなんて非常識」

 どっちが非常識だ!

 激しくせき込んでいたので、スネイプの至極もっともな台詞は宙に浮いた。



 * * * 
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