Dream(HP)2

□WelcomeBack
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「何が原因?って言うまでもないか」

 よく見ると、丸くなった目の上では眉がいつもより中央に寄っていた。

「髪も服も泥だらけだし油っぽいし、よく見たらひげも伸び放題」
「…そのことか」

 固まっていたシリウスはようやく体から力を抜き、弁解した。

「仕方がないさ。ずっと監獄の中だったんだ」
「これはお風呂に入ってもらわないと」

 彼の言葉をまったく聞きながし、扉を開けてレイは中へと入ろうとする。

「今沸かしてくる」

 シリウスは慌てて追いかけた。

「待ってくれ。せっかく会えたんだ、ハグぐらいさせてくれたって」
「ハグ?」

 レイの眉間に皺が寄った。

「その体で?正気?」
「君こそ正気か?10年ぶりの再会よりも風呂を優先させるなんて。自由の身になって真っ先に飛んできたんだぞ、わたしは」
「そんなに会いたかったなら、10年経っても覚えてるはずよね?私が綺麗好きだってことぐらい」
「…もちろん」
「嘘つかないの。あのね、お風呂に入るまでは、指一本たりとも触らせませんから」
「おい、それはいくらなんでも」


 そこではたと気付いたシリウスは、満面の笑みになった。


「そうか、あんまり驚いて喜ぶタイミングを見失ったんだな」
「は?」
「そういえばわたしの愛しい人は照れ屋だったよ。遠慮しなくていいんだ、さあ、思いっきり胸にとびこんでおいで!」
「…あのねえ」
「いや違うな、わたしから抱きしめてやるべきだった。やっぱりいつも通りじゃないとな」
「いや、だから」
「さあおいでハニー!」
「触るなボケェ!」

 自分にのびてきた手を、レイはものすごい勢いではたき落とした。
 幸いはたかれただけで済んだが、この勢いでは、あと一歩近ければ確実に殴られていたに違いない。


「聞いてなかった?まずは、風呂!」


 言い捨てて、レイはすたすたと家の中へと入っていった。



 シリウスはその背中を呆然となって見つめた。



 会いたくて会いたくてようやくたどり着いたのに。

 彼女の心は、もはや自分から離れてしまっていたのか。




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