Dream(HP)

□Tea 2
1ページ/6ページ

 

 男は決して鈍い方ではなかった。

 むしろ神経質なほうで、やろうと思えば並の女性より細やかな気配りができるほどだった。

 性格上、現実にはありえなかったが。


 そんなわけで、彼女の変化に気づくのは当然であった。




 ふわり、と、たちのぼる香り。



 それはバラであったりレモンであったりイチゴだったりしたが、数日おきに会うたび異なっていた。

 もちろん鋭い彼には、最近になって始まった理由の察しもついている。自身のためではない、誰かのためだ。

 彼女の様子を見る限り、それは正しいようだった。

 確実に外見に気を使うようになっていたし、笑顔になにかしら輝くものが備わっている。
 

 そういうこともあるだろう。彼は思った。
 
 ここに来て7年、子供は嫌でも成長する。その間にはそういう時期も通過する。

 教育に支障が出るなら規制せねばならないが、何もないなら特に教師が出しゃばることでもない。

 その点彼女は真面目で品行方正だ。節度というものを知っているので、行き過ぎることを心配しなくても良い。

 そう思っていた。
 
 授業などの受け答えで判断する限り、何も問題はなかった。
 




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ