Dream(HP)
□Tea 3
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コーリ家というのは、ブラック家同様、代々闇の魔術に詳しい純血の一族だった。
レイの祖父など、闇の陣営の幹部の一角を担っていたほどだ。
しかしその息子一人だけは、反抗期もあったのか、一族の中でたった一人不死鳥側についた。もっとも、早々に闇側に抹殺された。
ちなみに一族もほとんどアズカバン送りにされて、生存者はいまやレイ一人も同然である。
「あと一年」
スネイプは忠告する。
「…通用しないぞ。ホグワーツ…ここを出てしまえば」
「そうかしら」
「安全圏の中だからこそ、君は安全でいられたのだ」
彼女は灰色だった。
入ってきたばかりの一年生に正体を看破されたときには、さすがのスネイプも驚いた。
ただ、出自が判れば理由は知れた。
祖父の黒い知識を受け継ぐ。同時に、父の倫理の白さを理解する。
要は、自分と同じような立場だっただけだ。
レイはどちらの内情にも通じているけれど決して属さず、ただ両方をからかうだけだった。
優秀な人材なので危害を加えられることはないが、それも学校という防壁あってこそのことだ。
「いつまでも微妙な立場が成り立つと思うな。このまま社会に出てしまえばあっという間に危険視される」
「どちらに?」
「どちらにもだ。光に目を潰され、闇に足元をすくわれる」
「ふーん、大変そう」
「だから以前から言っている、どちらにつく気かね、と」
スネイプは何度となく、どちらかにつくことを勧めた。進路相談よりも時間を割いたかもしれない。
しかし彼女はどこ吹く風で、意見を聞こうとしなかった。
一貫して、言うことはひとつ。
このままがいい。
スネイプはそれを無視することに決めている。一応は生徒の安全を預かる寮監としてそれを許すことはできない。
特に4年を過ぎてからは、しつこく忠告しているつもりだった。
「決めておけと言ったはずだ…そろそろ、聞かせてもらっても構わんだろう。なんなら、我輩が世話してやってもいい」
「寮監が顔広いと便利ですねー」
どう考えてもスネイプには皮肉以外に取れないだろう台詞を吐いてから、レイはくにゃりと眉を寄せた。
「…今のままやってけないかしら」
「無理だな」
「だって現に先生はやってるでしょう」
「我輩とお前は違う。親兄弟から得た程度の半端な情報では、所詮使い物にならん」
「何よ意地悪」
彼女自身には能がないような言い方をされ、さすがにムッと来たレイは言い返す。
「じゃあ言うけど、もう決めてるのよ私」
「何だと?」
「ちなみに先生と敵同士ね。社内恋愛もいいかと思ったんだけど、やっぱりロミジュリは燃えるしー」
「どちらだ、どちらの側につく」
レイが発した台詞の枝葉はまるで無視し、スネイプはずばり聞いた。
「それはあなたの心がご存知ですわ、先生」
レイは得たりとばかりに微笑む。
どことなく艶やかだった。
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