Dream(HP)
□Tea 2
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製薬に一番適した大鍋はどの金属で作るべきかを彼が話し終えると、女はなめらかに切り出した。
――それじゃ私は、そろそろ…
男は瞬時に反応できなかった。思考停止だった彼の頭には、あまりに予想外の台詞だった。
それでもなんとか不自然でない程度の返事はできた。
―――ああ、そうだったな。
その台詞を言った瞬間、体の感覚が男に戻った。
まるでちぎれてしまっていた神経がようやく繋がった気分だった。
自分の手や足を、再び自分のものとして動かせるようになった。
手始めに、それまで彼女しか見ていなかった目で、時計を見る。
針はノックの音がしてから15分も経過していた。
ち、と彼は内心で舌打ちする。
特に利益も得られそうにない相手とくだらない話を、15分も?正気ではない。
退室を許可された雰囲気を読み取り、彼女は一礼した。
西洋にそんな習慣はないというのに、律儀にも故郷の「年長者には敬意を示す」という礼儀を守っているのだろう。
そしてドアのほうを向く。
腰まで届く長い髪が、地下室のわずかな光を映しこんでいる。
歩き出す。
一歩、
踏み出すたび、髪が、ローブが、なめらかに揺れる。
二歩、
ローブから伸びた手も、前後に動いている。
三歩。
その手は白く、細く、
――またしても、彼の体の自由は奪われた。
いや、思考さえも奪われていたのかもしれない。
その瞬間、彼は、
目の前の手を掴むことだけを考え、
そして、実行した。
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