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小夜啼鳥(連作)
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小夜啼鳥1【追い掛けっこ】


森の中を白兎が走っていた。
直ぐ後ろを狐が追い掛けている。
狐は大きく跳躍して白兎を捩じ伏せた。
組み敷かれた白兎は暴れるがその喉を狐がしっかり咥えている。
だが不思議な事に狐は白兎を殺さない。
殺す代りに自分の匂いを白兎に擦り付ける。
何度も何度も執拗に身体を擦り付け白兎が幾ら暴れても止めない。
弄ぶだけ弄ぶと狐は白兎を離してやった。
再び白兎は逃げ、狐はまた追い掛ける。
そんな追い掛けっこを白兎と狐はずっと続けていた。
やがて息が切れた白兎が蹲ると狐がそこへ伸し掛かった。
――殺せ
白兎に言われても狐は相変わらず自分の匂いを擦り付けるだけ。
――殺せ!
狐は笑った。笑いながら白兎の胸に顔を埋めて鼓動に耳を欹てる。
――殺さないか…っ!
苛立つ白兎を尻目に身体を擦り付け耳朶を甘噛みした。
白兎がビクっと震える。
狐はうっとりして目を細めた。
「まだだよ、まだ殺さない」
睨み付ける白兎の柔らかい頬を撫でながら狐は囁く。
「まだ俺様は満足してない」
太股の内側へ指を這わせて行くと白兎は逃れようと身体を捩った。
潜り込ませた指先に蜜が絡む。優しく掻き混ぜると遂に耐えられず白兎の腰が切なく揺れた。
――殺して
甘い息を弾ませながら白兎が乞う。
――お願い、もう殺して
「良いよ」
猛り切った狐自身に躊躇無く貫かれ、白兎は喉を反らして嬌声を上げた。
構わず狐は白兎の奥を抉る。
核を摘めば白い身体が痙攣した。
「お望み通り殺してあげる。こっちでね」
狐は残酷に笑う。
その瞳の中に快楽に搦め取られて絶望する白兎が映った。
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