過去小説
□妬いてしまうほどに…
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(信長様…)
今宵も呼んでくれない…
(そんなにもこの光秀がお嫌いですか?)
夜を迎えるたびにそう思う。
夜の相手として呼ぶのは決まって蘭丸。
それが光秀にとっては悔しくてたまらなかった。
(愛していると仰ったのは嘘だったのですか?私の心の中にはもはやあなたしかいないというのに…)
自分も信長の小姓だったら…とさえ思う。
「光秀、うぬの望みはなんだ?」
ある日信長様に聞かれた一言。
(私の望みは…)
「私の…この光秀の望みは…信長様が治める泰平の世でございます。」
(違う…)
(いえ…それも私の望み…ですが、それ以上に…)
(あなたの…)
(貴方の心を独り占めしたい…)
(あなたの愛が欲しい…)
そんなある夜
信長に突然呼び出された。
部屋に入り周囲を見るが、普段なら傍にいるはずの蘭丸がその場にはなく、信長一人がその場にいるだけであった。
「信長様、お呼びでしょうか?」
「来たな光秀。久しぶりに二人きりになれるのだ、もっと喜ぶと思ったがな。」
「…お戯れを…」
控えめな光秀の頬を撫でる信長。
「この信長と夜を過ごすのをずっと待っていたのであろう?」
「……あ。」
(見抜かれている)
信長の手の温もり、存在の大きさが改めてわかる
「近うよれ光秀。」
「…あなたには…全て見抜かれてしまうのですね。」
「ふふ…愛い奴め。うぬも今まで淋しかったのであろう?。冷静に見えてもこの信長にはお見通しよ。」
優しく光秀を抱きよせ、髪を撫でる
「信長様…」
(私の望み…)
(ようやく…)
「嬉しゅうございます…信長様」
「ふふ、素直になったな。愛い奴よ。勘違いするではない、信長が一番に求めるのはお蘭ではない。うぬぞ」
それが信長の本音。
一番に愛しているのは光秀なのだ。