遊戯語り
□サクラノアカツキ
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『壬生くん』
大きな目はウサギのように赤くて、肩はまだ震えていて。
それでも君は、笑っていた。
『卒業、おめでと。……お疲れさま』
「ああ……君も、おめでとう」
「お疲れさま」の真意に気づかないふりをして、礼を交わす。……学校という水面の下の僕になど、関わらない方がいいのだから。
まして君は、卒業の日に涙を流し人を労うような優しい君だけは、
ああ、巻き込みたくなかったのに。
『ねえ全部、終わったんだよね?……壬生くんも、傷つかなくていいんでしょ?』
そう問う君は、すっかり癖になった仕草で脇腹を押さえる。
冬服の厚い布地の下に大きな傷があるのを、僕は知っている。
……それは、僕と関わった故に付いた物だから。
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