遊戯語り

□拍手集
3ページ/11ページ

それは、火の国の陽炎にも似て。





「……」


白い帽子の青年の、視線の先には華奢にも見える制服姿の少年。

短いポニーテールの少女に小突かれて困ったように笑う少年は、あくまで少年であるのに。

青年の感覚は、微かな女性の気配を感じていた。それはきっと、自分と同年代であろう娘の。





感ずれど見えず。


話せど聴こえぬ。


されど確実にそこに存在している。


それは絢爛舞踏の種。


人類の希望を希望たらしめる為の、介入者。





……しかし青年には、そんな事はどうでも良かった。


介入対象たる少年は少年自身を保ち、日々奮闘し奔走する。
そこに他の意思を感じるとすれば、最良の結果に終わる事が多い点だろうか。


積極的ではない介入、その結果誰も介入者の存在を知らない。


それでも娘はそこに存在し、この世界の人間と同様に抗っているのだろう。……そこに孤独があろうとも。



青年は知りたかった。介入者の娘がどんな姿を、どんな声をしているのか。


――――ひとりきりで、どんな事を考えているのか。



「銀河先輩!」



少年の声がした。何か違和感を覚えて、青年は帽子の奥から覗く目を細める。





手を振る少年の姿に、見慣れない娘の姿が一瞬重なった。





「――――」


瞬間瞠目し、青年は違和感の正体に気がつく。



少年は、彼を名字である「来須先輩」と呼ぶ。



では、今彼を呼んだのは――。


「ぎんちゃんとお話したかったのねー」


気づけば、大きな猫を抱えた童女が横で笑っていた。


「あのこは強くて優しいのよ。ぎんちゃんとおんなじなの」


童女は続ける。無邪気な子供の笑顔に慈母のそれを滲ませて。


「ずっとののみたちと一緒にいるの。大丈夫なのよ、ちゃんと笑ってるの」


「……そう、か」


一言発し、青年は今一度少年を見やる。そこに、もう娘は見えなかったけれど。


「今度」が来たなら話が出来る。

そう、漠然と感じた。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ