「おねがい」
分かってないのか、それとも分かってやっているのか、それが分からない。(これほど質が悪いこともない)
だけど、ツナの「おねがい」に、オレが滅法弱いのは確かで、大抵のことはオレから折れてしまう。それくらい、ツナのおねがい、には破壊力があるのだ。
それは、目の前にいるコイツも同じこと。
「分かりました、十代目!この獄寺隼人、十代目のためでしたら、降りかかる火の粉の雨にも耐えてみせます!」
「え、いや、火の粉は避けた方が良いと思うよ、火傷するから」
「さすが十代目!何処までもお優しい…」
「獄寺君、むちゃなお願いしてごめんね」
「いいえそんな!右腕として、立派に役目を果たしてきます!」
バタン!と、勢い良く屋上の扉から飛び出していった、その後ろ姿に、暫く手を振る。
そして向き直ったツナの表情は、なんだか憮然としていた。
「…で、これからどうするの」
「ん?」
「ん、じゃないよ。獄寺君に用事頼めって、山本が言ったんだろ」
「うん。サンキューな、ツナ」
オレがおねがいしたから、聞いてくれたんだよな。
オレがツナのおねがいに弱いように、ツナはオレのおねがいに弱いから。
「ツナと二人きりになりたかったから」
キスして良い?おねがい。
オレがそう言うと、ツナは困ったように眉を寄せながら、そっと瞼を下ろした。
きゅ、と真一文字に結んだ唇まで愛しくて、啄むように何度もキスをした
小悪魔な彼のセリフ
お題サイト「確かに恋だった」より
「2.おねがい」