SHORT

□相合傘
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「った!何すんだバカ」

「バカにバカ呼ばわりされるとは納得いかねーな」

「テニスバカは否定できないだろ」

「確かに」

「まあ宍戸はテニス取ってもバカだけどね」

「…るせーよ」








あれ、おかしい。
いつもはここから
壮絶なバトルが始まるのに。




私達は二人とも
頭がいい方じゃないから
仕舞には手が出て足が出て
男同士のような喧嘩をする。
まあじゃれてるだけなんだけどね。






そんな宍戸が
ベランダにくにゃりと座り込む。
珍しい、こんなこともあんのか。


ケツに入れられた蹴りを
お返しできないのは残念だけど
ここはひとまず様子を見よう
一応「しんゆう」だから。










「変なもんでも食ったの?」

「ちげーよ」

「鳳くんと喧嘩でもした?」

「そんなんじゃねえよ」

「…彼女と、なんかあった?」

「…ねーよ、なにも。」






あ、決まり。
宍戸の様子がおかしいのは
彼女のせいらしい。

彼女。
私の友達でもある
かわいいこ。






「わかんねーよ、色々。何もねーんだけどさ」

「バカ、無い頭で難しいこと考えるからムカムカすんのよ。」

「るせーな、お前に言われたくねーよ」

「まあ私もお世辞にも頭いい方じゃないけどね、バカはバカでバカなりの生き方してるつもりですけど。身の丈に合ってるっつーかさ。」

「…お前今バカって三回言ったぞ」

「こまけーな」









なんだ可愛くない。
元気ないかと思ったのに
他人の発言に
ツッコミ入れる余裕はあるのね








「よくわかんないけどさ、好きなんでしょ?彼女。」

「おう、たりめーだ!」

「じゃあ迷うなバカ!」









思い切りチョップを
お見舞いしてやった。
予想外だったみたいで
宍戸は今にも崩れそうだ
(身体的ダメージでね)







痛かっただろ
なんたって
今のはさっきの蹴りの分だけじゃなくて
相談料と
行き場のない私の気持ちまで
しっかり込めたから、一発に。

こんなに応援してやってんだぞ
自己犠牲伴う全面協力だぞ
このやろう。
上手くいかないだなんて
言うな。

人の心の中に
勝手に入ってきて
得意のダッシュでひっかきまわして
思い切り突き放して
都合良く「しんゆう」のまま

宍戸は何も気付いて無い。










「ほら、あたしそーゆうの縁無いし、テニス部の人に相談すればいいんじゃない?あ、ほら滝くんとか!…鳳くんでも良いと思うけど」

「バッ…おま、あんな、後輩にそんなこと聞けるわけねーだろ!」

「あーはいはい、そんなカッコつけてる余裕あるなら問題ないね」

「うっわ…なんでお前そう可愛げねーことばっか口から飛び出すかなー」

「あ?可愛げなんて随分前に夕陽の海に捨ててきたっつの」

「ちげーよそうじゃなくて…お前彼氏作ろうとか思わねーの?アイツお前の事可愛いって言ってたぞ」

「アイツって?彼女?」

「おう。まあ俺には全くわかんねーけどな、強情で意地っ張りで可愛げのかけらも見えねえよ、アイツ眼科行った方がいいのかな…あ、行ってるか、コンタクトだしな」

「余計な心配しやがって…いらないって言ってるでしょ、そーゆうの。疲れるしたぶん向いてない。」

「そーゆうとこが可愛げないって言ってんのに。ま、俺には関係ないけどな。そんなだから疲れないし、お前といるの」

「無理やりフォローしてくれなくても結構ですけど」

「黙れ」










私の事をひとしきりバカにして
宍戸は清々しい顔をしてる。
こっちからすりゃいい迷惑だ。








「元気でたじゃん宍戸」

「そーだな、サンキュ」

「こういうお礼の言われ方ってあんま嬉しくないよね」

「素直に受け取れ」

「じゃあ一発殴らせろ」

「…は?」

「ジョーダンジョーダン、そんなびびるなって」

「なっ!」











噂をすれば教室の外に可愛い彼女。






「おうおう、お迎えですよ〜」

「うっせーな…ちょっと行ってくる」

「ほいほーい」







あああああああああああああああ
あああああーもう!















あなたのその
まなざしが

遠くのあの子映したから。








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