NovEl

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オディール達3人はホテルの一部屋に入った。
この部屋は8階で、窓から見える夜景は宝石を散らしたように綺麗だった。
部屋に入るなり、まずはしゃいだのはコイル。
カーテンを全開にし、見るからにふかふかのベッドに寝ころび、テーブルの上の菓子をつまむ。そのうち探検をすると言い出し、リオンを無理矢理連れて行った。
残されたオディールはというと、1人ボーと窓の外を眺めていた。別に疲れたわけじゃない。でも気持ちが重い。ふと窓に映った自分を見つめる。

今、オディールの心は闇に沈み始めていた。
『名前…か…』


1時間くらい経つと、明るい顔をしてコイルが帰ってきた。後ろにはもちろん更に疲れたといった様子のリオンもいる。それから少しも休む間もなく、夕食や風呂などに行って、今は寝る支度をしている。
『なぁ〜』
昼間、遊園地で買った煎餅をかじりながらコイルがオディールに話しかけた。
『今日さぁなんかあったわけ?』
『別に』
コイルは一瞬黙ってからふぅ〜んとふの抜けた声を出して、またせんべいをかじり始めたが、リオンはまだオディールのほうを見つめていた。

しばらくすると、コイルはせんべいの袋を抱きしめながら眠ってしまった。
リオンはそっと窓の外を見つめるオディールに近寄る。
『師匠』
『…何だ』
『…すみません。せっかくのお休みなのに無理にお誘いしたりして…』
『別にお前のせいじゃない』
『…ぁの…何があったか言って下さいませんか…?』
『は?』
『師匠今朝からずっと変ですよ。何か思いつめてるっていうか…その…』
オディールの視線がリオンからゆっくりとまた夜景に移った。
『何もないと言っただろ』
『……』
クシャリとナイロンの潰れる音をたてて、コイルが寝返りをうつ音が聞こえたが、2人共全く反応しない。

『…ぁの…師匠…ずっと思ってたこと言ってもいいですか…?』
『何だ』
『…どうして…いつも1人で抱え込もうとするんですか?あなたには、たくさん仲間がいるじゃないですか。』
『…』
『…何で、どうして仲間に頼らないんですか?』
「仲間」オディールの心の中にその言葉が響いた。

…仲間…か…
それはいったい、お前にとって何なのだろうな…

…私は、私しか信じない…

他人を信じることは、逆に他人を傷つけてしまうことがあるのを、オディールは知っていた。だから「仲間」なんて考えたことはない。必要だとも思わない。信じるのは自分だけだ。
『…別に抱え込んでなどいない』
『師匠…』
リオンがオディールの向かいの椅子に座った。
『らしくありませんよ?師匠のことです。何かあっても普通は平然として相手に悟られないようにするんでしょ?でも今日はあからさまでしたよ。キャロル様は黙っておられましたが、コイル様はさっきここ(ホテル)をまわった時におっしゃっていました。今日は様子が変だって。』
『…』
『僕だっていつも一緒にいるんです。今朝お話した時からおかしいなって思ってました。聞かないでおこうとは思ったんですが、やっぱり気になって…』
『…』
オディールは黙って立ち上がり、カーテンを半分しめた。
『…』
『…師匠…?』
『…夢を見た』
『…夢…ですか?』
『あぁ……夢だ…』
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