NovEl

□Z
1ページ/1ページ



『もぅ…困ったわねぇ…』
『キャロル』
呼んだのは、いかにも不機嫌そうにしているオディールだった。
『私は帰るぞ』
キャロルはダメよぉと大きな声を出して立ち去ろうとしたオディールの手を握る。
『私が新しいの買ってあの子達に渡してくるからッね?それとも……』
キャロルの目が急に細くなった。
オディールはそれがどういうことなのかすぐにわかった。
キャロルは(オディールだけではないが)やたらとフリフリした服、いわゆるゴスロリと言われるような服を普段着ているのだが、自分だけでは気が済まず、それを気に入った者に着させて写真を撮るのが趣味なのだ。
その一番の(今の)犠牲者はオディール。もちろんオディールがそんなことをやすやすと許すわけではないのだが、毎回何かで脅されたり、条件をつけられたりで、結局は着せられてしまう。
あのわけのわからない無意味にチャラチャラした服を着せられると思うと、背筋がぞっとする。
オディールは返事のかわりに大きなため息をつくと、キャロルはにっこりと笑って、またヒラヒラのレースをあしらったスカートを揺らしながら人ゴミに消えていった。


『次アッチだぜっ』
『待ってょロイッ』
そこはもう遊園地の中。オディールやキャロル達を振り回しまくっているのは、言うまでもなくロイだった。
もう乗り物のほとんどは制覇しただろうか。観覧車、メリーゴーランド、コーヒーカップ、急流滑り、ジェットコースター…。後ろの2つは身長制限があったのだが、2人がうまく合体して1人となり、果たして本当にそうできたのか、係員の目をごまかしていた。
もう空は茜色をおびはじめた夕焼けだった。キャロルがロイ達を連れて帰ろうとするのだが、閉園までいるとなかなか言うことを聞かないのだ。一番双子達の面倒を見たコイルをはじめ、全ての乗り物に乗るきのなかったオディールを毎回誘って、何度か険悪なムードになると、割って入ってなだめたリオンの2人は特に疲れきっていた。
平然としているのはオディールただ1人。
『ねぇオディール、私達じゃダメなの…なんとかしてくれなぃ?』
キャロルが隣にいたオディールに手を合わせて言った。
『何故私…』
最後まで言い切れなかった。またあの目つきをされたのだ。オディールは再びため息をついて、さきさき行くロイを必死にとめようとしているリーズのもとに歩いて行った。
『離せよリーズまだ俺は乗るぜッ』
『でも、もぉ日がくれちゃうから…』
『そこのうさぎ』
『何だよッ』
ロイは強気で言い放ち、振り向いた。
その瞬間、目を見開いて固まってしまった。
そこには、若干殺気の混じったオーラを振りまくオディールが恐ろしい顔で立って双子を見下ろしていた。
『なななな何だ…ぉぉオレは帰らなぃぞ』
ロイはブルブル震えながらも強がり、オディールに対抗しようとする。
と、その時。オディールが2人に手を伸ばした。2人とも目をつむる。
ヒョイッ
『ワッ』(リーズ)
『ォワッ』(ロイ)
オディールは軽々2人を持ちあげ、キャロル達のいる遊園地中央の噴水の前に連れて行った。
『さッ帰ろうね?』
キャロルがにっこり笑って2人の手をとり、出口に向かう。 向かいざま一瞬振り返ってオディールに口ぱくでありがとうと言ったのだが、肝心のオディールはというと、怒ったような足取りで逆方向に歩いていたあとだった。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ