NovEl

□Y
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色とりどりの風船が飴玉のように空に浮かんでいる。
あちらこちらで笑い声や話声が聞こえ、当たり一面は人で溢れかえっていた。
『…何故こうなる』
『さ…さぁ…』(リオン
『俺にもさっぱり…』(コイル)
3人は遊園地のゲート(入り口)の前で立ち尽くしていた。
立ち尽くしていたというのは、言い方の通り、良い気分ではないということになる。3人ともバラバラのポーズをとっているが、見つめる先は1つ、チケット売り場の最上部。その先にいるのは、こんなに色が散りばめられている中でも、かなり周りから浮いているピンク色の影。
『ごめんお待たせぇッ』
笑顔いっぱいで、レースもいっぱいで、手にチケットを四枚持って走ってくるのは“キャロル=シャリア”。桃色のカラーズバトルを持つ戦士。
現存する戦士の中では最年長なのだが、見た目は20代前半、あるいは10代後半と言ってもおかしくはない。それはこのど派手な全身桃色…いや、ピンクのフリフリした服のせいか、厚い化粧のせいか…。
実年齢ははっきりしていないが、昔オディールの師であった戦士と同期なので、30は間違いなく超えているといったところだ。
そして今、誰が誘ったわけでもないのだが、キャロルも日帰りで遊園地に同行することになったのだった。
『はぃッリオンくんッ』
『ぁ…ありがとうござぃます…』
リオンは苦笑いしながらチケットを受け取る。
『でも凄いわねぇッデパ地下の抽選で1等賞当てるなんて!!』
『ぁ…いぇ…ぁはは…(デパ地下じゃなぃですよ…!)』
『凄いわょっ!私1回も当たったことないもの…そういうの…』
『ぁれ…キャロル様も買い物とか行かれるんですか?』
『ぅん、まぁたまに気がむいたらね!』
『へぇーそぅなんですかぁー!』
そんな会話の間に、2枚目のチケットはコイルに渡った。
キャロルが顔も合わせずに渡したのだ。
コイルは俺はそっちのけかいという風な顔をしながら、しぶしぶチケットを受け取る。
そして、キャロルが笑顔で3枚目をオディールに渡そうとしたその時だった。
『それ俺んだぜッ』
いきなり白いものが2つ、目の前を一瞬にして通り過ぎた。
『ダメだょロイ…』
『いぃんだぜッ』
それは人間の言葉を話している真っ白な“うさぎ”だった。
『ったく…お前らなぁ!うさぎの姿で喋んなつってんだろッ!?』
コイルが2羽のうさぎの首の後ろを掴んで持ち上げる。
すると、その白いうさぎは見る間に人間の姿に変わっていった。
双子のうさぎ“ロイ”と“リーズ”。それぞれ、水色、橙色のカラーズバトルを持つ戦士。
(過去の記録によると)普通、カラーズバトルを持つ者が双子ならば、同じ色を持ち、2人で1つとなってようやく戦士となるのだが、この双子の場合は特殊で、それぞれ違う色を持っている。
まだまだ見た目も中身も子供だが、いざ戦闘となると、修行中の身にもかかわらず、なかなかの力を見せてくれる強者の双子なのだ。
ここで疑問なのは、どうしてうさぎから人間になれたかということだが、これはまだ明らかにされていない。
本部(センター)の推測では【2人は元は2羽の双子のうさぎだったのだが、なんらかの理由でそれぞれに違うカラーズバトルが宿り、その力で人間の姿になることが可能】ということになっている。
カラーズバトルはその色や宿った者によって不思議な力を与えるケースがまれにある。
現に、2つの色を持つオディールもその1人である。
『べーッ離せょバカコイルッ』
ロイは、ジタバタと暴れだした。コイルがじっとしろと言おうとした瞬間、腹に(ロイによる)衝撃的な蹴りをくらい、うめき声をあげる。それと同時にロイは地面に着地した。
リーズもコイルを心配そうに見つめながら着地した。
『ベロベロバァーッほら行くぜリーズッ』
『ぇッぁっロイ待ってッ』
『ストーップ』
チケットを握りしめ、駆け出した2人の前に立ちはだかったのはキャロルだ。
『2人とも?これはリオン兄さんが、デパ地下の抽選であてた引換券で貰ったオディール姉さんのチケットよ?遊園地行きたいならお姉ちゃんが買ってあげるから、これ返そうね?』
キャロルはしゃがんでニコニコ笑いながらチケットを返すよう説得する。
だが、ロイの反応はというと…
『ぅるせぇ子供扱いすんじゃねぇッばばぁッ』
やはり子供は子供だった。
それだけ言うと、ロイはリーズの手を握って走り出した。
 

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