NovEl

□U
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ーダンダンダンー

午前6時。階段を勢いよく駆け上る音が家中に響く。
『起きて下さい師匠ッ!』
“リオン=テリス”は息を切らせながら自分の目の前にあるドアに向かって言った。
だが返事がない。
もう一度『師匠』と言いながらノックしてみる。
すると、
『朝っぱらからうるさいやつだな』
いかにも不機嫌そうな声はリオンの背後から聞こえた。
『ぁ…すみません、起きてらしたんですねッ!おはようございます師匠ッ』
師匠と言われた少女、彼女がこの世界で闇と戦う(14人の中の)戦士の1人。
通称“黒鳥オディール”。
戦士は1人ずつ色(力)を持っている…これをカラーズバトルと呼んでいるのだが、オディールはその体に、黒と紫の2つのカラーズバトルを宿す特異な戦士。その戦う姿が黒い鳥のようであった為、このような呼び名がついたそうだ。
リオンも青のカラーズバトルを宿す戦士の1人だが、わけあって戦士として認められているわけではない。
だが、こうしてオディールのそばで毎日のように仲間と共に闇と戦っているのだ。
『あの…今日何かあったんですか?』
リオンは不思議そうな顔をして尋ねた。オディールは基本的に学校が休みの日は昼近くまで寝ている。何せ夜遅くまでリオンの修行につきあったり、任務に出ていたり…。1週間(土日抜き)の睡眠時間を合計するとおそらく20時間も寝ていないだろう。
まぁそれは、リオンも同じはずなのだが…。
ガチャッ
オディールは返事の代わりにさっきリオンがノックしていたドアを開けた。
『師匠?』
『別に何もない』
短く答えると、目を合わせることなく部屋に入っていった。
『ぁの…聞かないんですか?』
ドアを閉めようとしたオディールの背に話しかける。
『どうせ今日の任務の良し悪しだろ。それとも、今日はないのか』
『いぇっ!あ…でも今日は聞いてなぃですねぇ…。最近はほとんど聞きませんが…』
ここのとこ任務は少ない方だった。
けして充実していて休みが多くなったわけじゃないが…おそらく全員で14名、今は10名になってしまった戦士を裏で束ねる本部(センター)になんらかの問題があり、戦士とのコンタクトがとりにくい状態になっているのだろう。

『…じゃぁ何なんだ』
オディールは少しいらだち気味に言った。
『ぁッはい!実はですねッ』
リオンはポケットから折り畳まれたチラシのようなものを取り出した。
『…何だ』
『昨日、買い物行った時に抽選やってたので、アンケート書いて出してみたんですよ。それでさっきネット見たら2等賞だったんです!1泊2日の遊園地無料招待券!今日ちょうど土曜日ですし…今から行きませんか?』
『…遊園地に1泊2日…』
『駄目…ですか?』
『…』
オディールは再び背を向けてドアを閉めた。
『私がそういう所に行くと思うのか?』
ドアの向こうから聞こえてくる曇った声に、リオンはいえと答えることしかできなかった。
 

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