えるりっく君ち

□driving with my brother
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『driving with my brother』


「アル、ドライブしようぜ。」

免許取りたてのエドワードからの電話。

「ドライブって車は?」
「友達に借りた。オープンカーだぜ。」
「勇気ある友達だね。兄さんに車貸すなんて。」
「バカ、オレ上手いぜ。ゲームだってアルに負けたことなかったし。」
「いや、マリオカートと比べられても困るし…」
「で、行くのか、行かないのか?」
「行きます。」
「よし!!明日朝迎えに行くからな。」
「うん。」
「弁当作って待っとけ。」
「え〜?お弁当作るの?」
「8時に行くからな。」

「8時?!…9時にしない?」
「8時ったら8時!」
「うぅ〜。はいはい8時ね。」
「じゃあ明日な!」
「うん。明日ね。」

エドワードはこの春見事に都内の国立大学に受かり、家を出てひとり暮らしをしている。
とはいえ、土日は毎週帰って来る。
しかし先週と今週は免許取得で土曜日帰って来られず、夕方に電話が来たのだ。

―今週も一日だけか…。でも会えないよりはいいよね。

長年の片思いが実り、二人は晴れて両思い…と同時に離れ離れ。
毎週帰って来てもこれまでとさして変わりはない。

―ボクが兄さんに好きって言って…兄さんも答えてくれたよね。それから何も変らないけど、それは兄さんがそう望んでるの?それとも…。

アルフォンスは深いため息をつく。

「…寝よ。明日8時までにお弁当だった。」


翌朝。
空は晴れ渡り絶好のドライブ日和。
8時ちょうどにちょっと癖のあるクラクションが2回。

「さすが兄さん。時間ぴったりだ。」

アルフォンスが用意してあったランチの詰まったボストンを片手にドアを開けると、そこには真っ赤なオープンカーに乗って黒のライダーズジャケットを羽織りサングラスをかけたエドワード。
ご丁寧に流行のBGM付き。

「おはようアル!どうよコレ!」
「…派手。」
「なにおぅっ!」
「でも似合ってるよ。兄さん。」
「お…おう。ほら、乗りたまえよ、アルフォンス君。」
「なんで偉そうなのさ。」
「んじゃ、乗れよアルフォンス!カモーンレッツゴー!!」
「今度はどこのDJですか。」
「う〜。ごちゃごちゃうるせえ!ほら乗れよアル。」

エドワードは口を尖らせて助手席のシートを叩く。

「ええ〜?!ボク後ろがいいなぁ…」
「なんで。」
「安全だから?」
「ったく!お前はここだ!バカアル!」
「初心者の横は怖い。」
「心配すんな。ここまで無事に来たんだから。」
「…信号無視…した?」
「…一回…」
「やっぱり止めよう!うちでご飯食べよう!」
「だぁぁ〜っ!なんにもない田舎道でうっかりだから大丈夫!アル、オレの隣りはお前しかいないだろ?!」
「……うん。」
「…なんだよ。その顔。」
「ふふっ。なんかいいね。それ。」
「なにがだよ。」
「いいのいいの。」

アルフォンスはクスクス笑いながら助手席のドアを開ける。

「うわ、内側ヒョウ柄だ…コレ持ってる友達って…」
「いい奴だぜ。MDとかも貸してくれたし…」
「そりゃあ初心者にこんな高そうな車貸してくれるくらいだもん。いい人でしょうね。」
「あ、待て。アルさみいぞ。上着替えて来いよ。」
「あ、そっか。オープンカーだもんね。」

アルフォンスは一旦家に戻り、上着を替えて出て来る。出て来たアルフォンスはエドワードが着ている物とよく似たライダーズジャケットにサングラス姿。

「なんだ?オレのマネか?」
「どうせなら『現代版ブルースブラザーズ』で。」
「おう、ブラザーには違いねえからな。乗れよブラザー!」
「OK!」

アルフォンスは助手席に乗り込み尋ねる。

「で、どこ行くの?」
「そりゃあ最初のドライブっていったらアレだろ。」
「「海!!!」」

風を切り、ちょっとうるさいオーディオを鳴らしながら、真っ赤なオープンカーは二人を乗せて海へと運ぶ。
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