えるりっく君ち

□風邪ひきエドワード
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『風邪ひきエドワード』


「だからそばに寄らないでって行ったのに…」

予想通りアルフォンスの風邪はエドワードにうつった。

「だってアルが行かないでって言ったんだぞ。」
「え〜?そんなこと言ってないよ。うなされたから寝言だったんじゃない?ほら、寝て寝て。」
「つめてえな。弱ってたときはあんなに可愛かったのに…」
「可愛くなくてスミマセンね。ほら、これから熱上がるよ。インフルエンザだもん。ボクでも辛かったんだから。」
「…(ぼそっ)鬼の攪乱」
「しょっちゅう風邪ひく兄さんの世話させられてるボクは鬼?」
「いいえ。よくできた弟デス。」
「そうだ兄さん、熱計ってみた?」
「…まだ」
「結構ありそうだよ。顔赤いもん。」

アルフォンスがエドワードのおでこに手を当てる。

「38℃はあるね。体温計もってくるね。ベッドに入ってて。」
「はいはい、よく風邪ひくにいちゃんはいい子で寝ますよ〜。」

―この間のアレはなんだったんだ。「兄さん」って呼びながら泣いてたよな。元気になった途端に生意気になるんだもんな、まったく。

「兄さん、体温計持って来たよ。」
「なぁアル。この間の熱出てた時、どんな夢みてた?」
「ん?あぁ、いつものヤツ。」
「いつもの?」
「うん。熱が高い時に見るんだ。いつも同じ。」
「あぁ。オレもあるな。」
「ボクはね、なんだか暗いところに閉じ込められる夢。でも外は見えるし、音もきこえるんだ。ただ感覚がないんだよ。」
「感覚がない?」
「うん。冷たいとか熱いとか痛いとか。あと、白いところにいる夢。」
「ふぅん…その夢ってオレ出て来るの?」
「うう〜ん…あれは兄さんなのかな?赤いコート着てる金髪の人が出て来るんだ。」
「赤いコート?オレ着たことないな…。でもお前泣きながら兄さんって言ってたぞ。」
「えぇ〜?じゃあ兄さんなのかな?」
「知るか。」
「あはは。そりゃあそうか。ボクの夢だもんね。あ、それより熱計ってよ。」
「おお、忘れてた。」

ピピピピピ…

「38.2℃。まだまだこれからだね。」
「うへえ〜。…関節いたくなって来た。」
「一眠りしたら病院行こう。昨日の夜から熱あったよね。インフルエンザだとは思うけど、念のために検査しないと。」
「げぇ〜。あれ鼻血出るんだよな。」
「そう?ボク出た事ないよ。」
「そりゃあオレ鼻高いもん。」
「そうですか。じゃあ鼻高くなくてよかったな、ボク。兄さんは寝て下さい。」
「…なんかくやしい。」
「後でまた見に来るね。」
「へいへい。」

エドワードの熱はどんどん上がり、40℃を超える。熱でうかされ夢を見る。大抵毎回同じ夢。

腕が痛い。足が痛い。
しかし見るとそこには鋼色の手足。ないはずの手足が痛いのだ。
そして夢の中の自分は大きな鎧を「アル」と呼ぶ。
よくはわからないが、夢の中の自分は「アル」を鎧にしたらしい。
何度も心の中で謝り、「取り戻す」と誓う。
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