えるりっく君ち
□あらしのよるに
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『あらしのよるに』
外は季節外れの激しい雨と風。
―こんな日は家で読書するに限るな。
アルフォンスはリビングでコーヒーを飲みつつ、エドワードに勧められた本のページをめくる。
外からは壁に当たる木の枝の音や、窓を叩き付ける雨の音が絶え間なく聞こえて来る。
―雨戸閉めておいた方がいいかな?
アルフォンスが席を立った瞬間、カーテンの隙間から部屋に閃光が入り込み、少し遅れて雷鳴が響き渡る。
―結構近いな。
冷静に秒数を数えて雷との距離を測る。
次の瞬間、部屋が闇に包まれる。
アルフォンスは手元にある携帯を開き、その明かりで足元を照らしながら窓に近付く。
カーテンを開けて回りを見ても闇の中に明かりは見えない。
―うちだけじゃないな。近所はみんな停電ってことは…長引くかな。
確認を終えてふとエドワードがいないことに気付く。
「兄さん?」
返事はない。
二階に向かって呼び掛けても返事はない。
出かけてはいないはずだ。
―もしかして…。
アルフォンスは洗面所兼脱衣所に向かう。
「兄さん?」
「アル!」
「やっぱりお風呂か。早く入ったらって言ったのに…。」
「あぁ。ほんとに…」
珍しく弱気なエドワードにクスッと笑うアルフォンス。