分家

□狼の憂鬱
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『狼の憂鬱』

こんにちは。ボクはアルフォンス。
ボクは満月になると狼になるいわゆる狼男…なんですが、どうやら父親が狼男で母親が人間というハーフが災いして満月が来ても完全に変身できないのが悩みです。

「おい、アル。何やってんだ?」

ボクの兄さんです。兄さんはハーフなのに変身しません。

「うん。考え事。」
「そっか。なぁコーヒー飲まねぇ?」
「いいよ。」

ボクは兄さんが大好きです。
綺麗でかっこよくて優しくて…自慢の兄で、ボクが誰よりも好きな人です。兄さんはそのことは知りません。
でもボクの変身は兄さんが好きだと自覚してから始まったから、何か関係があるのかもしれない。
ボクが変身することがわかったら兄さんに嫌われちゃうかもしれません。兄さんは狼男だった父さんのことが大嫌いだったから。

今日は満月。
月が出る前に部屋に籠ることにします。

晩ご飯を食べてお風呂に入り、月明りを浴びない様に用心して部屋に入ります。
野生の血が騒ぐので変身はしておきます。洋服が破れると嫌なので先に脱いでからカーテンを開けます。
筋肉が盛り上がって来て身体がグレーの毛で覆われ始め、爪は尖り手足に肉球も盛り上がります。長いふさふさの尻尾も生えて来ます。歯も犬歯がとがって伸びて、耳も大きくなり毛が生えます。

・・・と、ボクの変身はここまで。ほんとに中途半端なんです。

ため息を付いて両手の肉球をポムポムと叩きながらベッドに寝転がります。

「ああ…ボクは一生このままなのかなぁ。」

トントン

ノックの音。

「アル、なぁまだ起きてるよな。話あるんだけど…ちょっと開けてくれ。」

兄さんだ!開けられないよ。ボク今狼男だから。

「ごめん…ちょっと眠くって…」
「すぐすむから…」
「ちょっと…頭が痛いんだよね。」

嘘吐きたくないけど、ごめんね兄さん今はダメなんだ。

「大丈夫か?」
「うん…大したことはないんだけど…」
「どうしても今日話したいんだ。頼む。」

どうして今日?明日になればボクは変身しないのに。

「どうしても今日じゃなきゃダメなの?」
「ああ。」
「……ちょっと待ってて…」

ボクはカーテンを閉めて深呼吸をしてから洋服を着る。
身体はみるみるうちにもとに戻って行く。
落ち着いて、自分に言い聞かせながらドアをそおっと開ける。

そこには真剣な表情の兄さん。
うわぁ今日は一段とかっこいい…はっ!あんまり興奮したら狼男にもどっちゃうよ!
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