分家

□肩越しの桜
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『肩越しの桜』


賢者の石を探す旅の途中、降り立ったその街の桜は、満開を過ぎ花吹雪。通りにはピンクの吹き溜まりがあちこちに点在している。

「綺麗だね、兄さん」
「そうか?オレはこう、どばっと満開に咲いてる方がいいな。」
「桜にどばっと満開なんて言い方するの兄さんくらいだよ。ボクは咲き始めとか今みたいな散り間際も好きだな。ねぇ、今日のランチ外で食べたら?テイクアウトして。お花見しよう。」
「でもアル食わねえのに…」
「ボクはどうせどこでも食べないんだから、いいんだよ。外だとその間桜見られるから。あ、でも花びら付いちゃうかな?」
「…いや、そうだな。いいな、花見するか。花びら食っても毒じゃねえからな。」
「じゃあボク、その先の公園でいい場所探してるね!」
「おう!じゃオレはランチテイクアウトしてくるわ。」
「うん!一番大きな桜の木探すね。」
「OK。迷子になんなよ。」
「迷子になるのは兄さんでしょ?ボクはどこにいても目立つから迷子になりっこないよ。」
「ははは…まぁそうだな。」

アルフォンスはガシャンガシャンと音を立てて走って行った。
エドワードは辺りを見回し、1軒のパン屋を見つける。そこでサンドイッチを買い、その隣りにある八百屋でリンゴを2つ買う。1つはランチ、1つは夜に宿で食べる為。店を出て先程通り掛かった公園に向かう。

「アル〜?」

公園は思ったより広く、いつもはすぐに見つかるアルフォンスの姿がなかなか見つからない。

「アル〜!どこいったんだ、アイツ…」

エドワードは1本の見事な桜の前で足を止める。
幹の太さからいっても樹齢数十年はありそうだ。

「でけぇ〜。」

その時強い風が吹きエドワードの目の前はピンクの渦。
エドワードはギュッと目をつぶる。
風が治まり、そっと目を開けるとそこには先程まではいなかった青年が立っていた。
青の軍服に身をつつんだ背の高い金髪の青年。
広い背中がゆっくり振り返ると金色の瞳が一瞬驚いたように大きくなり、すぐに穏やかに微笑む。

「やっぱりここだったんだ…」
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