分家

□snow smile
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『snow smile』

肩口から入り込む冷気に毛布を頬までずり上げ、カーテンから漏れる光に目を覚ます。いつもより明るいカーテンの向こう側に、寝過ごしたかとベッドサイドのテーブルに置いてある目覚まし時計に手を伸ばす。
いつもよりずっと早い時間。
もう一度眠ろうと目覚まし時計を戻すと、玄関のドアが締まる音。

眠い目を擦りながらベッドから起き上がり、ベッドの縁に座る。パジャマを脱ぎ、鳥肌をたてながらTシャツの上にパーカーを着る。脱ぎ、Gパンに足を通すと肌に直に冷たさが伝わり身震いする。Gパンのファスナーをあげながら窓辺に近付きカーテンを開ける。

白い世界。

早朝のせいで車も通っていない。少し前に通ったらしい新聞配達の自転車のタイヤの跡だけが落書きのように見えるだけ。
靴下を履いて部屋を出てリビングに向かう途中に隣りの部屋をノックする。
…返事はない。
リビングを見渡しても気配はない。
洗面所に行き顔を洗うと冷たい水が痛い。

リビングを抜け玄関に向かう。案の定玄関にあるはずのブーツがない。かけてあったダウンジャケットに片手を通しながら靴に足を突っ込む。もう片手を通しながら、もう片手の手で玄関ドアを開ける。

玄関先から足跡が雑木林の方に続いている。
その足跡にそっと足を入れる。次の足も、足跡通りに1歩ずつ進む。
白い世界は静まり返り、踏み締める足元の雪のきしむような小さな音しか聞こえない。
通りを渡り、雑木林をもう少しで抜けようという時、広場の様になったところで視界が開ける。
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