分家
□2years after<15>
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『2years after』<15>
「エルリック先生!これ受け取ってください!」
今日はバレンタインデー。
校門の前で立っているアルフォンスに女生徒が紙袋を差し出した。
「校則ではチョコレート持って来るのは禁止なんだよ」
「だから校門で渡したんです。ここはまだ学校じゃないでしょう?」
「そりゃそうだけど…」
「みんなそう言って渡したんでしょ」
女生徒が指差す先、アルフォンスの背後にはたくさんのカラフルな紙袋。
「今日エルリック先生が当番だって聞いて、みんなそうすると思って…あ!」
予鈴が鳴り、女生徒は校内に走り出した。
「じゃあね、先生〜」
振り返りざまにウインクに投げキッス。
アルフォンスは眉を寄せてため息をついた。
「今年もすげぇな〜エルリックせんせ」
背後からの声に振り向くとエドワードがニヤリと笑いながら立っていた。
「おはよう。遅刻だよ、ロックベル君」
「一緒に住んでる奴が目覚まし時計止めちゃってさぁ…」
「でも、ちゃんと起こしたよ。兄さんだって…」
「誰の兄ちゃんの話だ?さて、予鈴遅刻くらいなら大丈夫だろ。んじゃな、エルリックせんせ」
「あ…うん…」
去年の春、エドワードは15年振りにアルフォンスの前に現れた。一度死んでから死ぬ前の記憶を持って生まれ変わったのだ。見た目はよく似ているが別人の身体で。
物心が着く頃には何処かにいるであろう弟を探していた。大きくなるにつれ、はっきりしていく記憶を頼りにアルフォンスを見つけ出したのは、9歳の頃だった。
それからずっとアルフォンスを見守り続け、アルフォンスが務める高校に入学し、再会した。
あの桜吹雪の入学式からもう2年が経とうとしている。
「ロックベル君ってエルリック先生と一緒に住んでるのよね?エルリック先生って、今彼女いるの?」
休み時間に女生徒が話しかけてきた。修学旅行の時に一緒に住んでいる事がバレて、二人は遠い親戚でアルフォンスが保護者代わりということになっている。
「あ〜どうだろうな…今はいないんじゃねぇかな」
「え!そうなの?じゃあ、こんどロックベル君のところに遊びに行ってもいい?料理作ってあげる」
「目当てはアイツなんだろ。あのカタブツが自分とこの生徒うちに入れると思うか⁈」
「でも、ロックベル君の友達ならいいって言うんじゃない⁈」
「オレが迷惑だ」
「もう!ロックベル君のケチ!」
女生徒は口を尖らせてぷいと去って行った。
今月に入ってから似た様な話をされたのが3回。一緒に住んでいる事がバレてからはもう10回以上同じ様な話をされた。
「モテる身内がいるのも大変だな」
エドワードはため息をついた。