BooK

□幸村
1ページ/1ページ




「あ、幸村君いた!」
また来たのか。 
俺が入院してから
というもの彼女は
しつこく俺を追い
掛けるようになっ
た。息が荒い。 
今でも売店に来た
だけなのに探し回
っていたらしい 
この間なんてバレ
ンタインにチョコ
を渡してきた。 
味は美味しかった
きっと料理上手な
のかもしれない。
「本当好きだね、俺
を探すの」   
「へ?そりゃあ幸
村君が好きだから」
普通なら恥ずかし
い台詞をさらっと
呟いてはにかむ彼
女に俺も顔が緩んだ
こうしょっちゅう
追い掛けてくる所
、別に迷惑だと思
ったことはない。
寧ろもっと追い掛
けてほしいぐらい
「あの、幸村君」
「何?」    
「あたしね、看護
婦さんにもう‥ 
退院出来るよ、 
って言われたの‥」
退院。たったの二
文字なのにどうし
ても俺には強く重
く響いてきた。 
確かに俺より早く
彼女は入院してい
たから当たり前と
言えば当たり前な
のかもしれない。
「‥そうか。良か
ったじゃないか」
本当は喜ばなけれ
ばいけないのにど
うしても素直に喜
べないのはきっと
本当に君を好きに
なってしまったか
ら。あぁどうした
らいいんだ。  
「退院‥明後日だ
と思うから。」 
「明後日、か。 
随分早いんだね‥」
「うん。あたし、
幸村君のこと絶対
忘れないからね」
彼女の顔が歪んだ
口は笑ってるのに。
「ごめん‥それ、
伝えに来ただけだ
から、またね。」
いつもならくだら
ない話で盛り上が
るのに今日だけは
違った。彼女が振
りかえると俺は作
り笑いをして手を
振った。明後日‥
ホワイトデーじゃ
ないか。    



「退院おめでとう
ございます!!」 
医者や看護婦の歓
声が聞こてくえる
彼女が退院する日
、つまり今日は 
ホワイトデー。 
結局売店で売って
いた飴を勝ったの
に、中々渡せない
会ったら引き止め
てしまいそうだか
ら。彼女を迎える
車が来たようで医
者も看護婦も彼女
も歩き出した。 
行かないでくれ。
まだ俺を追い掛け
ていてほしい。傍
にいて。    
「ゆめ!!」   
俺は初めて彼女の
名前を呼んでいた。
ゆめは振り返ると
涙を流していた。
「折角退院できる
のに‥泣くなよ」
「だっ、て幸村君
とバイバイしちゃ
うから‥」   
「大丈夫だよ、俺
はいつでもゆめの
こと想ってるから」
「へ、幸村君それ
って、あの‥」 
「うん。俺ゆめの
こと好きみたい」
「!嬉しい、」 
俺に抱きついてき
たゆめは折れそう
なほど細い。  
「それでゆめに渡
したいものがある
んだけど。」  
「え、私に?」 
「今日ホワイトデ
ーだから。こんな
もので悪いけど」
こんなもの、と言
っても1番高かっ
た。まあゆめにな
ら構わないけど。
「幸村君が、お返
しくれると思わな
かった」    
「ほら、ありがと
う、わ?」   
「ん、ありがとう!!」
「ゆめ。」 
「なあに幸村く 

‥‥え」    
ゆめの肩を
掴んでキスした。
りんごみたいに 
真っ赤に頬を染ま
った。     
「幸村君//」  
「たまには会いに
来てくれるかい?」
「うん、絶対!!」
「じゃあねゆめ」
「ばいばい!!」 
振り返って歩いて
いくゆめ。すごく
楽しかったよ。 
「あ、幸村君!!」
「なに?」   
「私も幸村君のこ
と好き、大好き!」
「フフ、知ってる。
俺も大好きだよ」




(幸村君!!お見舞い
にきたよ!!)   
(久しぶり。お見舞
いじゃなくて看病、
だろ?)     
 
 
 
2010.03.10   
なんか全然ホワイ
トデーじゃないよ
うな気がする。 
 
 
 
 
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]