Sing to the Sky

01
1ページ/1ページ




  夕方、立海テニス部のレギュラーは
  ダブルス試合の最中集合がかかって
  口は笑っているのに目は笑っていな
  い幸村君に瞬殺された。やる気ない
  だのなんだのひでー内容だったけど
  正直当たってると思う。こんな花粉
  漂ってるコートで目も鼻もやられち
  まうだろい。またコートに戻って気
  持ち入れ替えようかと思ったけどや
  っぱ花粉とかつれえよ。雲一つなか
  った青い空が段々と薄暗くなってつ
  いに球が見えなくなる域まで達した
  。まあすぐにライト当たるようにな
  るから気にしてねーけど。やべえ、
  腹減って死にそうなんだけど。そこ
  ら辺の女に菓子でも貰うしかねえな。



  □


  「…幸村君まじで言ってんの?」
  「嘘だと思ってもいいけど。」
  あれから結局我慢出来なくなった俺
  はばれないようにこっそりお菓子貰
  ったはずだったのに黒オーラ出して
  る幸村君に肩叩かれてこんなバツ受
  けちまった。今から青学まで行く?
  んな怠い話があるかいくら幸村君で
  も俺は行きたくねえ、絶対に行かね
  えぞ「お菓子禁止令でも出そうか」
  …やっぱり行くことにしよう。出来
  るだけこの方の機嫌損なうようなこ
  としないほうがいいんだつかしねえ
  「丸井先輩頑張ってくださいね!」
  制服に着替えてる赤也は生意気な口
  を叩いてくる。
  「ああ?お前も来いバカ也」
  「いや悪いスけど今日姉貴帰ってく
  るんで無理ッス」
  「ブン太俺も今日姉貴が帰ってくる
  から無理じゃ」
  「いやいやお前は余裕でいるだろ」

  赤也の隣で仁王は面白がって笑って
  やがる。俺だけなんなんだよ。いや
  俺が悪かったんだけどさ。
  「ブン太。俺、行ってもいいぜ」
  後ろから苦労人の(俺が言うのも何だ
  が)天使の囁きみたいな一言が聞こえ
  てきてこいつがいてよかったって思
  ってたのに。
  「ん?今日?…わかった。じゃあ」

  電話に出て一分もしないうちに会話
  が終わったと思えば俺の目を見て、
  申し訳なさそうな顔をした。

  「…ブン太悪ぃ。今日、無理だ」 

  「いや。別にいいぜ…」

  ああ結局こんな運命なのか。




  「頼んだよブン太」

  いくら今日の練習が何気に早めに切
  り上げたからって酷い仕打ちだと思
  う。校門で幸村君は満面の笑みを浮
  かべて手を振ってきた。それよりも
  何故幸村君が青学に行けるほどの金
  を持参していたか。想像したら始め
  から俺に行かせるつもりだったのだ
  ろうかなんて思えてきてしまった。
  電車使う、なんてことここ最近は全
  くなかった。彼女もいねえし部活糞
  忙しいし三ヶ月以上使ってねえから
  正直怠いと思いながらもテニスバッ
  グを背負う幸村君の背中をただ呆然
  と見ていた。本当に怠い。ただの届
  け物のために行くなんてな。振り返
  って家とは逆の駅の方へ向かった。
 



  □



  やっと大通りに出てきた。チャリ通
  じゃねえから勿論駅まで徒歩。今思
  えば一回家帰ってチャリ取ってくれ
  ばよかったんじゃね?俺何してんだ
  ろ。部活終わってからこの距離を歩
  いてる俺はすげえと思う。つうか偉
  い。腹減ったから駅着いたらコンビ
  ニ行くか。大通りを抜けて人通りは
  あまりないけど今俺が歩いてるこの
  場所は壁打ちとか出来るいい場所。
  そういや最近部活長くてここ来てな
  かったな。まあ駅すら行ってないん
  だから当たり前なのか。そこら辺に
  落ちてる枯れ葉や散らばってる小石
  を蹴りながらそんなことを思ってい
  た。…何かいいことねえかなあ。 


  「……………〜〜♪」


  何処からか聞こえてくる音がよくわ
  からなくて色々考えた。此処、公園
  みたいな場所だから店もないしラジ
  オでもCDかけてるわけでもないよ
  な。だとしたら…何処かで楽器弾い
  てるのか?俺は何故か無性に気にな
  って回りを見回してみた。

  「〜♪♪」

  「…あれ、か」

  遠くてよく見えないけどギター弾い
  て歌ってる女の子?いや女の人?で
  かい木を丸く囲ってるベンチに座っ
  て歌う彼女に目が離せなくて自然と
  無意識に足が動いてた。

  「ほら 何も怖くないから 今すぐに
  飛びだそう 勇気出して 後ろ指ささ
  れたって あたしはあたしだから…」

  彼女の声とギターの音以外、何も聞
  こえなくて。俺と同じくらいの顔を
  してる彼女は明らか年齢と比例しな
  い歌唱力だ。同い年くらいの奴で、
  こんなに上手い奴…信じらんねえ。


  俺はギターを弾く彼女をただ呆然と
  見つめていた。この出会いが俺を変
  えていくことも知らずに。

    


  (それは儚くて綺麗な声だった)
 
 
 
  ▼20100327
  駄目だなー
 
 
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]