「うたたね」  ■金澤×日野■

 今年の冬はいつもより暖かいとニュースで言っていたが、それでも日が落ちてくれば気温は一気に下がっていくものだ、いくら日中日差しが入って暖房を入れなくても充分すごせるほど暖かいこの部屋だって例外ではないのに…

 「こいつは、ここで寝てるんだよ…。」

 この状況をどこからどう突っこんでいいのか、煙草をくわえた唇の隙間から落ちるのは間の抜けた溜息ばかりだ。
その原因となっている少女はソファにもたれかかって可愛らしい寝顔を無防備に晒して気持ちよさそうに寝息をたてて、しばらく起きる気配も見せない。

 「安心されてる…からだろーな。」

 当然と言えば当然なのかも知れない、この場所は音楽準備室でここに出入りするのは教師である自分だ。
 こうなった原因ももちろん自分にある、アンサンブルコンサートの会場の件で呼び出したのに、今度は自分が呼び出されてかなりの時間彼女をここに待たせることになってしまったのだから、こんな小春日の柔らかな日が射し込む中で何もせずただ待たされている状況で睡魔に勝てるはずがないことは、仕方のないことなのだが…。

 「オレだって…なぁ…。」

 何処か抑えた苦みを含む呟きは思いの外部屋に大きく響いた気がして、僅かに心臓が跳ね上る。
 可愛らしい寝顔に引き寄せられるように彼女の頬に触れた指先はそのまま、心地よい音を紡ぐ唇へと滑り、柔らかなその感触に禁忌を犯す甘美な衝動を覚えたとき、微かにそれが動いた、言い訳の聞かない状況に触れた指の一本も動かすことができないままに瞳を開けるであろう彼女に身構える。








→金澤先生大ピーンチ(笑)すみません続きます。


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