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□甘いキス
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いつものように、準備室で練習をおえた香穂子は、机の上に置かれた、小さい包みに気がついた。
「先生、これなんですか?」
まるで宝石箱のように、色とりどりの絵が描かれている小箱を、そっと手に取ってみる。
「キレイ・・。」
思ったより、軽るい、何が入っているんだろう?
「んー?何がだ?」
楽譜の書棚から、のそりと出てきた金澤が、香穂の手もとを見る、
「ああ、そいつか、チョコレートだってよ。」
つかつかと、香穂子の側に来て、ひょいと箱をとった。
「いやさ、職員室にいたら『お裾分けです』って、机の上に置かれたんだよ」
そう言うと、包みを開く、
「うわ、カワイイ・・。」
キレイに包まれた、チョコレートが3粒入っていた。
目をきらきらさせて、それをのぞきんでいる香穂子の様子に苦笑しながら、一粒手に取る。
「お前さんが喜ぶと思って、こっちに持ってきて正解だな・・。食うか?」
そう言うと、包みを無造作に開いて、一瞬手を止めた。
香穂子がその様子に気付いて金澤の顔を見る、
「せんせ・・?」
金澤は香穂子を見て、ニヤリと笑うと、いきなりチョコを自分の口に入れた。
「あ・・それって、私にくれるんじゃなかったんですか、もう。」
思わず香穂子は苦笑する。
「いんや、お前さんにやるよ、ほれ、目、閉じろよ」
そう言われて、香穂子は彼がしようとしていることに気付いて、一気に頬に血を上らせる。
「・・っ、な・・何考えてるんですか!」
「ほら早くしないと、溶けっちまうだろうが」
有無を言わさず、香穂子の顎に手をかけ、顔を近づけていく、急に迫って来たので、思わず香穂子は目をつぶってしまった。

『口移し・・・だよね・・・うわ・・なんかドキドキするよぉ〜』

頭はパンク寸前だった、金澤の唇が、その温度を感じるくらい、近づいてくる。
自分の心臓の音がやけにウルサい、どうしてこんな時は時間がゆっくり流れていくように感じるんだろう、早く触れてくればいいのに・・・。




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