corda_ss

□歌の翼に
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「何でいつもそこにいるの?」
菜美が不思議そうに聞いていくる・・。

私が座っているのは音楽室の壁際、すぐ左手には準備室の扉がある。
「なんとなく…かな、だって、ほらやっぱり、ここじゃ私は浮いた存在でしょ?
なんか壁際に寄っちゃうと言うのか…
その…ま。察してよ」
なんか言い訳しなくちゃいけないから、しどろもどろになりつつも必死に言い募る。

「ふーん」

ごまかせたかな…そう思っていたのに、彼女はピンと来たって顔で、にっこり笑って私に顔近づけてくる。

「ま、そう言うことにしといてあげるよ。
こんな事に気づくのはこの私くらいだしさ。」

ばっちり決まるウィンク、すっかりお見通しだ…、
コンクールがきっかけで出会った私たちは終盤の頃にはすっかり親友になっていて、言葉に出せない辛い思いをわかってくれる大切な存在だった。

「ばれてます…か?」

おそるおそる聞いてみる。

「だから私くらいだって、誰もそんなこと気にとめないよ。
安心して、ね。」

さすが、新聞部のトップ屋、『味方につければ、心強いけど、敵にするとやっかいだ』って、言ってたのは、柚木先輩だったかな。
あなたが言いますか…ってそう思ったけど、確かにね、スルドイ…デス。
思わず肩で大きくため息をすると、手に持ったバイオリンケースにつけていた、キーホルダーが小さい音を立てる。
「今テスト準備期間だからね、それでここによくいるんだ…でしょ?」
菜美が私の横に座る。

…ちょっとそのニヤニヤわらいはやめてほしい、
ものすごくイヤらしい顔してるよ。
土浦くんに言いつけるぞ。

そんな私の心の内を知ってか知らずか、
「邪魔しちゃ悪いね。さぁネタ探しにでも行きますか」
と彼女は去っていった。




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