TREASURE

□記念日は誕生日
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「今日、誕生日か‥」

朝のニュース。
アナウンサーが告げた日付を聞いて、サンジはふと思い出す。
決して忘れていた訳ではないけれど、正直、誕生日を意識したのは久しぶりだった。
誕生日だからといって改まってチヤホヤされる訳でもないし、1つ年をとろうが体に何か変化が起きる訳でもない。
偶然その日に自分が生まれただけのこと。
それ以外は何も変わらない。
食べて、学校に行って‥、寝る。
代わり映えしない毎日を過ごす中で、サンジにとって誕生日は、いつの間にか『3月2日』というただの通過点にしか過ぎなかった。


***

その日の放課後。
授業の終わったサンジは、「腹減った」と言うゾロに言われるが儘、牛丼屋に来ている。
サンジは金銭的な理由から自炊を好み、あまり外食はしない。
むしろ自分で作った方が美味しい位だ。
友人であるゾロもそれを知っていて、誰かの家で飲む時以外誘われることは珍しいのだが、『たまにはいいだろ‥』とサンジはゾロの誘いに乗ったのだった。

「お愛想お願いします」

牛丼を平らげ、ゾロが通り縋りの店員に告げる。
それに対し、「お会計は別々ですか?」と店員はお決まりのセリフで返した。


「一緒で」

その言葉と一緒に現金を渡したゾロは、そさくさと店を後にしてしまった。
そんな彼の行動に少し動揺したサンジは、慌ててその後を追い掛ける。

確かに自分は金銭的な理由で自炊をしているし、実家を離れたせいでお金もない。
その辺ゾロが気を使ってくれていることも知っている。
けれど、これではあまりに惨め‥と云うよりも屈辱だ。

「オィ、金!」

サンジは未だ先を歩くゾロの腕を掴み、その手に小銭を握らせた。

「いらねェ」

だが、その度にサンジの手は跳ね返えされてしまう。

「なんで?!」
「いいから‥」

そんなやり取りを繰り返すうちに、ゾロはやっと重い口を開けた。

「お前、今日誕生日だろ?」

「…へ?」
「ったく、黙ってタダ飯食っとけ///」


だからか‥
サンジはただ漠然と思った。
それから一呼吸置いて、色々なことが頭に過ぎる。
男同士だから誕生日なんて気にも止めないのに。
自分はいつ誕生日を教えたかすらも覚えてないのに。
ゾロの一連の行動に、照れ隠しか‥なんて頭では考えていたけれど、本当は凄く喜んでる自分がいた。



あれから1年。
サンジにとって、今では誕生日が特別な日になった。


3月2日。
それはゾロに恋をした日‥。

fin.



きのっこさまに無理を言っていただきました!
やー、お願いしてみるもんだ(コラ)
ゾロになら牛丼だろうがマックだろうが、安い物でもいいから奢られたい。
そしてそんな風に祝われたい。
いいなサンジ。
ゾロが無意識かと思いきや、計画してるようにも見えて、愛おしいです。
サンジにとって、誕生日がゾロに恋した記念日になる、という発想がきのっこさまらしいです。

ありがとうございました!

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