紅い石

□戦争
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カタン、カタ…。

錬金釜が音を立てる。
もうすぐ『賢者の石』が出来上がるわ。
そしたら、すり潰してベイラムの汁を混ぜ併せれば…!
「リーウィ様。お夕食です〜。…リーウィ様。錬金術って、楽しいの?」
アリカに聞かれ、苦笑する。
楽しい楽しくないより、あの王から逃げたい、の方が強いのよね…。
それに…。
「…私は錬金術士だから…。錬金術は…。大好きよ」
生まれてから、ずっと側にあったモノ。
研究が成功するのも、楽しかったわ。
上手くいかなければ、また研鑚を重ねて…。
「リーウィ様。この綺麗な『紅い石』、なぁに?」
…?!
アリカは、いつの間にか錬金釜を覗いてた。
「あっ、ダメよ」
小さい子供って、好奇心旺盛なのね。
気をつけなくちゃ…。
「リーウィ様。アリカのパパとママ。錬金術すれば、生き返るかなぁ…?」
私は黙ってアリカを抱きしめた…。
子供たちが何故、王宮で盗みを働いたか…。
それは、食べ物が欲しかったからだと聞いた。
悲しい事に、子供たちの両親は居ない。
アリカの母親は流行病で、父親は開戦して流れ矢に運悪く当たり死んだ、という…。
他の死んだ子供たちも、似たり寄ったりだったみたい。
「…アリカ。錬金術で生き返らせると、人間じゃなくなってしまうの…。ゆっくり眠らせてあげましょう。きっとアリカのパパとママは神の庭から、アリカの事を見ててくれるわ。いい子でいないとね…?」
私がこう言うとアリカは寂しそうにした後、にっこり笑って頷いた…。


カラン、カララ…!

その二日後、待望の『愚者の石』が出来た…!
深い深い『蒼い石』は、魅惑的に輝く『紅い石』とは違い、恐ろしく思えたわ…。
それを掏り潰した。
早く!
王が帰る前に、飲まなくては…!!
水にサラサラと溶かすと、無色透明になった。
一息に飲み干す!

コクコクコク…。

「ふぅ…。これで良いのかしら…?」
…眠くなり、身体が冷えて行く。
ボ〜ッとした頭に、王の声がする…。
「良いに決まってるだろ?1日経てば、普通の人間だ…。俺の思惑通り、きちんと造れた様だな?さすがは『最後の神の錬金術士』だ。…リーウィ。もう2度と普通の『人間』に戻れる事はないからな。一週間、有意義に過ごせよ…?」
………一週間?


パチリ。

目を開けると、アリカの心配そうな顔が間近にあった。
目が合うと、嬉しそうに笑う。

パタパタパタ…!

「王様〜!リーウィ様起きたの〜!!」
扉の外へ走り出る。
「…小娘。寝室では走るな、と言ったハズだぞ?それに王妃様と呼べ。俺のたった1人の妻なのだからな」
部屋に戻って来たアリカを抱き寄せた。
「良いのよ?リーウィってお呼びなさい。王妃様って、寂しいもの…。それに」
私は王を挑む様に見上げた。
「私はもう普通の人間だもの。王妃では居られないわ」

ククククク…!

王が笑い出す。
「ハハハハハ…!リーウィ。お前は俺の妻だ。例え普通の人間になったとしても、な。…一週間後『賢者の石』を飲ませてやる。元通りお前は女神だ!…『愚者の石』の製造作製書は便利だったろう?瓦礫の山に置いといて、見つけられるかと危ぶんでいたが…。ミイネが見つけてくれたからな。感謝しているのだ。…リーウィなら必ず造り上げるだろうと、信用していた…」
…?!
どういう意味?
何故、私に『愚者の石』を造らせたの…?
「…寝台に上がると、いつも辛そうな顔をする。…いつまでも痛みがあるだろ。…女の顔に成れない。愛らしくて良いが、お前が辛そうなのは忍びない。…だから、慣らしてやる!俺を受け入れる事を…!!」
……………ゾワリとした…!

『執着』

という言葉が頭に浮かぶ。
立派な身分。
綺麗な立ち居振る舞い。
私より美しい女性などたくさん居るし、私より従順なのに…。
王は私以外、眼中に入らない。
私以外、手許に置かない。
私だけを見てる…。

逃げられ無い…!

私の頭にそんな言葉が浮かんだ…。


王はニヤリと笑い、宝石箱の中に『紅い石』を置き、私を寝台に手招きする…。
私は恐ろしさに身を竦ませ、イヤイヤと首を振る。
今迄の行為は、痛みを伴ない辛いだけだった。
なのに今は、私の全てが変えられてしまう様な、恐怖があった…!

ドサッ!

「イッ、イヤァァァ…!
バサバサあっさり、夜着と下着をはぎ取られ寝台に押し倒された。
バタバタ暴れようとも、強い腕は私の双丘を丹念に揉み上げる。
首筋に口接けられる。
背中を大きな手が這う。
何度も何度も…。
力強い手が足首を掴み、そして…!
「…イッ?!…うぅ!!」
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