紅い石

□戦争
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この部屋のベランダには、鉄格子がある。
私は鳥籠の中の鳥なのだ。
…ただし、七色玻璃(錬金術で造られたとても頑丈で透明な物)だから、光を反射して綺麗なのだけれど。
そこに花壇が出来た。
ベビーピアが並んでいる。
白だけじゃなく、有りとあらゆる色のベビーピア…。
王は白と言ったけど、花屋の主人が
「王妃様。白だけでは、花壇がお寂しいですよ?」
と植えてくれた。
白だけでは採算が合わないのと、数が足りなかったからかも知れないけれど、確かに可愛い花が咲き乱れるのはとても素晴らしいわ。
…王はまた、戦の高みの見物をしに出かけてて居ない。
錬金術の材料を、北の衣装部屋の隅に山と置いて行った。
…彼は私に、何を造らせようと言うのだろう…?
アントリオンの肝を、すり潰していた時だった。
「ごめんなさい〜!助けて〜!!」
窓の下方から、小さな声がしたの。
七色玻璃の隙間から、下方を覗き見ると…、子供?!
王宮の中に紛れ込んだか迷い込んだか、5、6人の小さな子供たちが居た。
…王宮警護兵に斬られる?!
「お止めなさい!」
格子の隙間から怒鳴り、慌てて部屋から飛び出て階段を駆け降りる。
…ここの兵士はあの王に従うだけあって、かなり乱暴な人が多いの。
早く行かないと斬り殺されてしまう!
宮廷女官たちが見たら、眉を潜める程ドレスを託し上げ、ブーツの音を立て走る!
ドアも、開くのを呑気に待たず押し開けた。
そして、彼らが居たと思われる場所まで走ったわ!

ハァハァ…!

ここら辺だったハズ!!

「ギャアァァァ…!」

「キャアァァァ!!」


苦しげな声と悲鳴が、奥の庭園から聞こえた。
慌てて向かうと、最後の1人が斬られるところだった!
私は蒼白で、動けなくなった女の子を庇う。

ザクッ…!

心臓から飛び出た、剣先を見る…。
焼ける様に痛い…!
「王妃様…!」
「しまった!リーウィ様を…!!どうしよう?!陛下に、腕をもぎ取られる!」
「この子供が悪い事にすれば良い。王宮で盗みを働いたんだ!目をくり抜かれ手足をもがれるのは…」
薄れ行く意識の中、4つ5つの女の子に罪を被せようだなんて…!
私が女の子に手を伸ばすのと、誰かの手が2人の兵士の肩と腕を折るのとが、同時だった。

バキッ!グキッ!!

「「ギャアァァァ〜!陛下!!」」

「コイツらを地下の例の場所に連れて行け!…小娘。お前の名は?リーウィに一生仕える気があるなら置いてやるが、無いなら…。俺の実験の材料だな。リーウィがケガをしたのは、お前のせいなのだからな!」
「…ご飯、食べれる?」
「あぁ。きちんと仕事を覚えればな」
「はい!解りました」
私の意識は限界で、急速に遠のいて行った…。


目を開けると、いつもの寝台だった。
隣りに王が眠っている。
ゆっくり起き上がると

ズキリ…!

まだ心臓が痛い…!
手で押さえる。
だけど、お腹が空いてるみたい…。
身体の修復に、かなり体力が使われたらしいわ。
「…どうした?夜中だぞ?…あれだけのケガをしたんだ。修復はまだ、終わらないだろ?」
王に声を掛けられ縮こまった。
頭で死を望んでいるのとは別に、身体は生きる事を望んでいた…。
「…そっか。腹が減ったんだな?粥があるぞ。持って来てやる」
煮立ててあったらしいお粥は、優しいミルクの味と蜂蜜の甘みがあった…。


「リーウィ様。おはようございます。起きられますか?」
だいぶ長い事、眠っていたらしいわ。
日付を見ると、刺された日から13日は経ってるわね…。
アリカと名乗った少女は、王宮の仕事に随分馴染んでいた。
王は何処かしら…?
…居ないのなら、また錬金術を…。
ヨロリと寝台から立ち上がると、アリカが慌てて寝室から走り出て行く。
「王様〜!リーウィ様の目が開いて動いてるの〜!」
…王は居るのね…。
私はゆっくりと寝台に座った。
「やっと起きたか…。心配したぞ?…これで心置き無く、イトイ国王の戦い振りを拝めるな。リーウィ。寂しいかもしれんが、ゆっくり養生しろよ?」
王は機嫌良く、何度も深く口接けし出て行った…。
「…えっとぉ…。リーウィ様。ご飯…」
真っ赤な顔したアリカに言われ、ハッとする。
…小さな子供の前で、とんでも無い事しちゃったわ…。


コリコリコリ…。

中断していた、アントリオンの肝のすり潰しを再開した。
「リーウィ様。何をして、う〜んとされて?らっしゃる?」
「うふふ♪まだ、言葉遣いが変ね。練習しないとね?」
アリカを見ると、こっくり頷いた。
「は〜い」
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