紅い石

□戦争
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「ミイネ。これを持って、故郷にお帰りなさい。…良い人を見つけて、幸せにね…」
「リーウィ様…。ありがとうございます。でもわたくし、こちらに残りたいと思っておりますの。…結婚したかった人は、もうどこにもいないのですもの…。リーウィ様に、一生お仕え致しますわ」
ミイネは痛々しく笑う。
私は、とても"危険だ"と思った。
このまま城に残ると、もっと嫌な事が起こる様な気がする…。
だから首を振った。
手に金貨を10枚、握らせる。
「ダメよ。お帰りなさい。私の事は心配せずに、また新しい幸せを見つけてね。馬車で送らせるわ。…国境を越えて、遠くに行きなさい。あなたなら、落ち着いたところで誰かに仕える事もできるわ…。頑張ってね」
「…リーウィ様。わたくしが邪魔ですか…?」
寂しそうに言われ、首を振った。
「あなたは善良過ぎる…。この城には来るべきじゃなかったの…。私なんかの側にいたのでは、一生幸せを見つける事は出来ないわ…。だから私の変わりに、幸せを見つけて…。今までありがとう。さようなら、元気でね…」
私は渋るミイネを説き伏せ、ミイネの亡くなった恋人と友人だったおとなしい兵士をお供に、城から送り出した…。


「何故ミイネを解雇したんだ?せっかく俺がミイネの男を、亡き者にさせたのに…。寂しくは無いのか?今ならまだ間に合う。駆け落ちでもしたなら、また男を殺してやろう…!おい」
「お待ち下さい!ミイネを追いかけないで!!そんな事をすれば…。一生口を利かないわ!」
「…何故だ?何が気に入らない…?ミイネがお前に何かしたのか?」
私は激しく首を振った。
「違うわ!…私、ミイネが結婚をして、お城を退城すると聞いて確かに寂しかったけど…。結婚式を見たかったわ…。幸せになって欲しいと、お祝いの言葉も掛けたかった…。だから、城から出したの!ここに居たんじゃ、一生言えないもの!!」
私が怒鳴ると、王は不思議そうに首を傾げた。
「…寂しいのなら、ここに置いとけば良いだろう?あの女の幸せより、お前の寂しさを紛らわせる方が先だ。…俺がずっと一緒にいられれば良いのだが、また出かけなければならない…。ドラゴンを持って来る約束を、果たして無いのでな…。1人で本当に良いのか…?」
私はこっくり頷いた。
「構いません。それよりミイネを、絶対に追わないで下さい。追わせれば2度と口を利きません」
「…解った。お前が一生俺の側にいると約束するのなら、追うまい」
「…はい。私は死ぬまで王のモノです…」
王はにったりと笑った。
また含みのある笑い方だわ…。
何かマズい事、言ったかしら?!
「解った」
王は満足そうに一言。
そしてゆっくり出て行った…。
何か失態をしたらしい…。


「なぁ、リーウィ。お前、錬金術使ってるだろう?欲しい材料とか、あるか?!」
私は心臓が止まるかという程驚き、のし掛かり上下に揺れる裸体を見る。
王は汗ばみ紅潮する顔を、歪めて笑う。
「…何だリーウィ?俺がお前の行動を知らない、とでも思っていたのか?一生懸命、材料を集めている様だな…。軟膏は助かったぞ!イトイ国王に渡したら、俺の評価が上がった。…今度はどんな物を造るのだ?材料を言えば、揃えよ、う!はぁ…!!リーウィ!一旦、終わらせるぞ!」
「あっ?!あぁ〜〜〜!」
理性が効かず、シーツを握り引っ張ってしまう。
目の前が真っ白になる!
そしてそのまま眠りの手に掴まれる…。


「順調だな…。全く素直で可愛い女だ。思った通りに事を運んでくれる…。材料を揃えてやって、一月城を空ければきっと…」
…王は何を望んでいるのかしら…?
うっすら目を開けると王の独り言が聞こえ、首を傾げた。
ギシギシと痛む身体を無理やり起こす…。
「…王…?何をしていらっしゃるの…?」
掛け布団で身体を覆い、錬金釜を覗く王に恐る恐る声をかけてみた…。
「…いや、別に。錬金術というものは、素晴らしいな…、と思ってな。お前の次に造るモノは何だろうな?俺の望むモノだと、嬉しいがな…」
私は笑った。
不老不死を得た王が、望むモノは解らない。
が、たぶん彼の望む事は叶えられないと思う。
私は不老不死から、普通の人間に戻るのだから…。
「…………………………機嫌が良いな、リーウィ。いつも笑っていれば、可愛いのにな…。…そういえば、セントリアがお気に入りだそうだな。特に白のベビーピアが、1番気に入っているらしいと、花屋の主人が言っていた…。ベランダに小さな花壇でも作ってやろうか?ベビーピアなら、簡単に育てられるそうだ。面倒なら侍女たちに任せれば良いし…」
そう私に聞きながら、既に決定事項の様に、命令書に指令を行った…。
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