ファシオミル

□アルバレードの花嫁〜裏と表の花嫁〜
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『目的のためには、手段を選んではならない。その目的のためにはその道を前進するのみ。世の賢者たちよ。自分の務めに妥協があってはならない。だが、人の道は無数にある。もし自分が望まぬ道に足を踏み入れても、1度立ち止まり自分の道を探るが良い。また新たなる己の道を見出せるであろう』
探究の書より、“人の進む道”抜粋



「お初に御目文字かかります。アディラーダ=メイオルドです。アディとお呼びくださいませ。…あの。夫になられるグラシード様は…」
アルバレードの王を見て、2人の王子を見比べた。
可愛らしく挨拶を受けた、アルバレードの王は
(メイオルド国王が可愛がっている。と聞いたからどんな綺麗な娘かと思いきや…まぁ、普通よりちょっと上って感じか…)
と失礼なことを思い、明るい茶色の髪と瞳の男を紹介する。
「こちらがそなたの夫になる予定のグラシードだ。グラシード。姫君に挨拶を」
グラシードは少し嫌そうに(アディラーダの感想だ)、軽く頭を下げてアディラーダの手に口づける。
「初めまして、アディラーダ姫。僕がグラシードです。…これから仲良くやっていきましょう」
(…コイツ。絶対仲良くしたい。なんて思ってないわね。でも、まぁ良いか。あたしに必要なのは、あたしが使える後ろ盾だもの。コイツがほんとに夫になろうが、打ち負かして下僕にしようがどっちでも良いわ)
ニッコリ笑う仮面の下でこのようなことを姫君が考えているとは知らないグラシードは、“簡単に御せそうだ”とほくそ笑んだ。
ただ、第一王子のサーベージはマジマジとアディラーダを見た。
サーベージは独身主義者で、アディラーダより8個年上の今年24歳になる。
だが女が嫌いなわけではない。
どちらかというと、アディラーダのような気安い可愛らしい女性は大好きだ。
おまけに弟グラシードを見て、目をキラリと光らせたのも気になる…。
しかしサーベージは心の内の考えは表に出さず、アディラーダの手を取り口づける。
「グラシードの兄でサーベージという。義理の兄妹になるのだから、サーベージと呼び捨てで良いよ」
アディラーダはサーベージをマジマジと見た。
濃い赤褐色の髪と父親のアルバレード国王ジュビエールと弟と同じ茶色の瞳を持っている。
顔は似たり寄ったりなのに、髪の色とその人を探るような目がアディラーダには気になった。
「あぁ、俺の髪の色が気になるの?俺の髪は亡くなられた母上譲りなんだ。母上の父上、つまり俺のおじい様は巫女国の神官だったらしいね。何故か俺だけおじい様に似てしまったらしい。でも、アディ姫も変わっている色だよ。金に近い茶色の髪と蜂蜜色の瞳なんて。確か君のおばあ様は東大陸の人だって聞いたけど…」
アディラーダは頷いた。
「そうよ。だけどちょっと違うわ。お母様はおばあ様譲りで綺麗な金色だけど、あたしはちょっと暗いの。おばあ様は綺麗な青い瞳でお母様はおじい様譲りの翠色。…あたしだけ違うの」
その少し沈んだ声にサーベージは、ちょっとコンプレックスを感じているのだと気づく。
だが、そんなもの気にする必要はないのだ。
「東大陸と西大陸の人は色々な血が混ざっているから、いきなり両親と違う色が出てもおかしくないよ?きっと曾おばあ様と瞳の色が一緒なんだよ。もしかしたら精霊王国の血が流れているのかも。あの島の人は金や琥珀の色の瞳の人多いし…」
その言葉にアディラーダは元気になった。
「そっか!精霊王国…。どんなところなのかしら…?興味あるわ…」
そして機嫌を直したとき、父親のジュビエールがグラシードの肘を叩いた。
ボケから解放されたグラシードは、自分の後宮(ハーレム)にアディラーダを連れて行く。
アディラーダは腰を折りジュビエールとサーベージに挨拶をして、長いローブの中のチラリと見える下穿きを優雅に捌き行ってしまった。
それをサーベージは黙って見送った。
「…グラシードが結婚をするのを羨ましがっておるのか?そなたなら選り取り見取りだろう。もし良ければ、パーティーでも行おうか?」
ジュビエールは、期待を込めて息子を見た。
しかしその自慢の息子はアッサリと首を振って断る。
「面倒臭いから、別に要らない。俺は自分のハーレムに戻るよ」
そしてサッサと下穿きを捌いて早歩きで謁見の間を後にした。
それをアルバレード国王ジュビエールは、豪華な座椅子に寄りかかり残念そうに見送ったのだった。
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