silver soul

□守ってください
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「銀ちゃん、チューするネ」



そう言って神楽は口先をたこのように伸ばし、迫ってきた



「はあ?ふざけ…」



神楽を押し返そうと頭に手を置いたが、髪で手がすべり、不覚にも俺と神楽の唇とが触れてしまった。
というか、かすった…?



「…あ、ああああ!!!わざとじゃねえんだっ!!す、すまねえっ」



すぐさに謝るが、神楽はうつむいている。

いくら神楽とは言え、ファーストキスが中年男なのはさすがに嫌なはずだ。



「あ、あの、神楽さん?」

「銀ちゃん」



不意に名前を呼ばれ、はいっと返事をしたが声が裏返ってしまった。



「銀ちゃん、お願いがあるネ」

「お願い?」

「1回でいいアル。だから毎日チューさせてほしいネ!!」



聞き間違い、だと信じたい。
もう一度聞いてみる



「今、なんて?」

「だーかーらー、毎日チューさせてほしいネ!!!」


どうやら聞き間違いではなかったようだ。

いやしかし待て。
俺的にそれはまずい。



「ふざけるな。なんでお前なんかと毎日ラブラブ新婚さんみたいなことしなきゃなんねえんだよ」

「そんなの決まってるヨ。銀ちゃんが好きだからネ」

「いや、好きとか嫌いとかの問題じゃなくてね、うん」

「愛してるヨ」
今、なんて言いました?
こんなガキが愛がどうとか言いましたよね?



「お前、自分が何言ってるか分かってんの?愛してると恋してるは違うのよ?」



俺が半分見下して言うと、神楽はニィっと変な笑みを浮かべて答えた。



「もちろんネ。銀ちゃんをお嫁にもらうアル」







………え?
うん、え?
……ちょっと待てえええええええ!!!!!!
今何かがおかしかった!!
今明らかに何かがおかしかった!!



「お嫁!?神楽が!?銀さんさすがにそれは無r…」

「何言ってるアルか?銀ちゃんが私の嫁アル。ちゃんと聞けヨ」

「聞いたよおお!!それおかしいよね!!銀さんはお嫁さんの役じゃないよね!!?逆だよね!!!」



やや興奮してしまったが、言いたいことは言った。
すると神楽は急にきょとんとした。



「だって銀ちゃんは料理もできるし可愛いし…お嫁さんにぴったりネ」



いやいやいや、意味わからないからね。



「それに、なんか見てられないアル。守りたくなるネ!」



この時の神楽がやけに格好良く見えたのを覚えている。
そして不覚にもきゅんとしたことも。



「銀ちゃん、私が大事にするネ。だから私についてきてほしいアル」



真っ直ぐに俺の目を見て言う神楽の気持ちは、紛れもなく本物だ



「………」


圧倒されて言葉が出ない。
体も動かない。

しかし神楽は俺に近づくなり、その両手で俺の肩を抱いた。



「私は本気ネ」



神楽はそうとだけ言うと、顔を近付けてゆっくり目を閉じた。



あとは俺次第だった。
しかしここにきてもうどうしようと悩む暇もなく、俺は動いた。








そして神楽にそっと触れた。
今度はさっきの事故とは違って、ゆっくり、できるだけ優しく…



瞬間、神楽は目を開けて俺を見てきたから恥ずかしさもあって俺は少し離れてうつむいた。

神楽の視線を感じた。



「銀ちゃん」



名前を呼ばれ、ビクッと肩が上がる。
やべーよ恥ずかしいよ。


「ありがとう、大好きアル!!!」



ふと顔を上げると、満円の笑みでこちらを見る神楽がいた。
その笑顔にまたしてもキュンとしてしまう。
もういっそこのまま、神楽のそばで守られるのも悪くないかな。

なんて思い始める俺は男ですよ。

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