silver soul

□微熱37.5℃
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「はい、今日の予定は中止〜」



体温計を横目に見ながら銀ちゃんは言った。

今日は待ちに待った休日で、銀ちゃんが動物園に連れてってくれると約束してくれた日。
なのに今私は、布団の中で頭痛とけだるさにうなされている。

最悪だ。
自分で自分の楽しみを潰してしまうなんて…っ



「銀ちゃん〜行くアルヨ〜」

「あ?なに言ってんだよ。銀さんに風邪うつったらどうするつもり?」

「私、元気アル」

「はいはい、おとなしく寝ててくださーい」

「う〜〜〜〜〜」



銀ちゃんのバカあ!
今日はせっかくのお出かけで、新八も用事でいなくて、つまりは2人だけだったわけで…

すごく楽しみだった。
それとも、変に緊張しておかしくなっちゃったのかな。
熱なんて滅多に出ない体質なのにな。



「銀ちゃん、今度いつ行けるアルか?」

「あ?まだ言ってんのか。そうだな〜最近忙しいからな、数ヶ月、数年後とかじゃねーの?」



あまりにリアルで、泣きそうになった。

いや、目はもう十分に潤っていた。
それが溢れ出る前に布団に潜り込み、私は丸くなった。

最悪だ。
最悪だ最悪だ最悪だ。
悔しい。



「おーい、そんなに落ち込むことかあ?たかが動物園だろ?」



動物園なんかじゃないよ。
私が悔しいのは動物園なんかじゃない。本当は…





「………明日行ってやるよ。だから1日で治せよっ」

「本当アルか?絶対アルか?」

「ああ。だからババアに果物でももらってくるわ」

「銀ちゃん!大好きアルっ」



顔を真っ赤にして、私は叫んだ。
銀ちゃんは、にっと笑って部屋を出て行った。

胸がどきどきする。
熱のせいなのだろうか、体中が熱い。

きっと銀ちゃんは私の気持ちなど数ミリも分かってはいないし、察してもいないだろう。

それでもいい。
だって私は銀ちゃんが好きだから。
むかつくくらい鈍感で、それでいて優しい銀ちゃんが私は好きなのだから。

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