silver soul

□恋のはじまり
1ページ/1ページ

"好き"



そのくらいの単語は知ってるし、意味だってわかる



"愛してる"



これもおなじ。
好きよりちょっと気持ちが強いだけで、他は何も変わらない単語。

こんなかんたんな言葉がどうして言えないのか。
ドラマの主人公は今夜も私を苛つかせる。



「また三郎は来週に持ち越したネ。男ならズバッといかなきゃだめネ!」

「いいじゃねえか。男だって時にはいろいろあんだよ」



お風呂上がりの銀時がソファーに寝そべりながら酒に手を出している。
湿った髪が艶を出し、いつにもまして美しい銀を放っていた。



「"いろいろ"って・・・何アルか」

「"いろいろ"は"いろいろ"だよ」

「答えになってないネ!!」



銀ちゃんはいつもそうやって答えをはぶらかす。
私の質問にまともに答えてくれたことは1回もないと思う。うん、たぶん。



「ねー神楽ちゃん」



不意に名前を呼ばれ、何故かドキッとした。



「お酒のふたが開かないの。開けて」



…用件はそれだけ。
私が難なくふたを開けると、銀さんはありがとな、と笑顔を向けてきた。
不覚にもきゅんとした。

いや、前にも銀さんの笑顔にきゅんとしたことがあった。
というか、今まで見てきた銀さんの笑顔には全てきゅんとした。

なんでだろう。
キモチワルイ。



「神楽?どうした?」



一瞬、自分の世界に入っていたが銀さんの声で戻ってきた。



「どう、もないネ」

「そうかーじゃあもう寝なさい」

「嫌ヨ!まだ起きてるネ!」

「何言ってんだよ。もう2時だぞ?お前明日は昼まで寝てる気ですかー?銀さん予備軍になりたいんですかー?」



そう言われ、時計を見ると2時を3センチほど過ぎた時間だった。
いつもならとっくに夢の中なのに今日は何故だか眠くなかった。



「銀ちゃんが寝るまで寝ないアル」

「あそう?じゃあ銀さんもう寝ちゃうから。おやすみー…」



銀さんはソファーの上で静かになった。






「…………銀ちゃん?」
「すーすー」



まさかこんなすぐに寝れるはずはないと思ったが、本当に寝息のようなものが聞こえてきたので確認のためにソファーに近付いた。
そして銀さんの顔を眺める。

長いまつげ
閉じたまぶた
今も湿った髪
そして…唇

今までずっと見てきた銀さんのはずなのに、見たことのないほど綺麗で、見惚れする。


全てが愛らしく感じた
全てが愛おしく感じた
全てが欲しくなった

ねえ、銀ちゃん。
私ね、アナタの全てが、スキ



「銀ちゃんおやすみネ」


銀さんの新しい一面が見れたおかげで、なんだか気持ちも晴れやかになった。
そんなるんるんな気分のまま寝床の押入れに入る。
もちろん寝付けなくて、自然とにやけてしまう。
だんだん顔も熱くなってくる。
早くまた銀さんに会いたいけど今日が終わらないことにはどうしようもないので、いつもより強めに目をぎゅっと閉じた。



「ほんっとに、ガキだよなあ」



神楽がそんなことをしているだなんて思いもしない銀さんはぽつりつぶやく。



「人の寝顔見るなんてタチ悪いっての」



自分の顔が熱いのは酒のせいにして、静かにまた眠りについた。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ