Tales of Graces

□シンデレラボーイ
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「もう大丈夫です。下ろしてください」

「いや、まだ安静にしてた方がいい」



先程、魔物との戦闘で負傷したヒューバートを抱きかかえる。
ヒューバートはもう大丈夫だと言い張るが、俺は心配でたまらない。



「というか、なんで、その……お姫様だっこなんですか。」

「だって、だっこしたらヒューバートの顔が見えないだろう?」

「〜っ!貴方って人は…っ」



普通はおんぶでしょう?!などと何か不満をぼやいているが、そこは聞かずに聞き流す。

それにしても…



「ヒューバートはかわいいよなあ」



その言葉に反応してか、ヒューバートはこちらを見る。
すると、だんだん頬が赤くなっていくのが見てとれた。



「なっ何を言い出すんですか!貴方はバカですかっ」



ああどうしようかわいい。
いちいち反論してくるとことか、実に健気でかわいい。

そんなことを思いながら見つめていると、ヒューバートはふいと顔を逸らしてしまった。
しかし長いまつげと綺麗すぎる横顔が彼をより魅力的に感じさせる。

つい見惚れてしまうほどの横顔も好きだが、やはり真正面が1番だ。



「おいヒューバート、こっち見ろよ」



呼びかけてみたがヒューバートはこちらを向かない。
むしろ絶対的に拒否されている気がする。



「ヒューバート〜」



もう一度名前を呼ぶ。
結果は変わらず。



「ひゅぅばぁとー」



ヒューバートは観念したのかゆっくりこちらを向いてくれた。変なため息も付けて。

ああ、赤く染まった頬がなんとも愛らしい。
ふいにキスをしたくなって、その頬に唇を落とす。
すると、頬を染めていた赤が瞬時に顔全体に広がった。



「〜〜っ!」

「どうしたヒューバート。」

「どうした、じゃないです!……わかってるくせに」

「わかってるって、何を?」



真っ赤になりながら言うもんだから、つい苛めたくなる。
それもこれも、こんな衝動を起こさせるお前が悪いんだからな。



「言ってくれなきゃわからないだろう?」

「………。」



口をぱくぱくさせているので何かを言ったのは分かるが聞き取ることができない。

聞こえないからもう1回。そう言うと、俯きながら呟いていたヒューバートは急に顔を上げた。








「…兄さん、そこだけじゃ嫌、です」








まさかのヒューバートからの催促に一瞬動揺する。
だってあのヒューバートだ。まさか、こんなまさかがあるだろうか。


動揺は本当に一瞬で、俺の胸はすぐに幸福感で溢れた。



「了承いたしました。それでは、姫のお望み通りに…」



お姫様だっこだったヒューバートを地面に下ろし、視線を合わせる。
そして、愛しい姫のお願いをその唇に優しく落とした。















「兄さんは、僕の王子様になってくれますか?」















上目遣いでそう言われたら、答えはもう1つしかない。



「俺はお前の王子だよ」



今度はヒューバートの体を抱き寄せて、誓いのキスをした。

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