Tales of Graces

□君観測日記
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兄さんが日記帳をくれたので今日から日記を始めようと思う。
日記なんていつぶりだろう。まあ楽しんでやっていこう。






――○月○日

今日は兄さんがずっとお腹が痛いと言って僕にすがりついてきた。そういうのはシェリアに頼めばいいのに。兄さんは僕に期待しすぎだ。




――○月×日

今日の兄さんはやたら元気でほとんど1人で魔物を倒していた。それを見たソフィが装備品なしで魔物に突っ込んで行って寿命が縮むかと思った。まあ、兄さんのおかげで無事にすんだけど。




――○月△日

今日は街に行った。オムライスの名店があって、ついほんの一瞬立ち止まってしまった。そしたら兄さんが食べたいなんて言い出したからみんなで中に入った。僕は別に食べずともよかったのに。兄さんもオムライスが好きなのだろうか。可愛いな。



――○月*日

信じられん。パスカルに日記を見られた。いつの間にあいつは忍び込んだんだ。…それに、別に、兄さんだらけでもいいじゃないか。兄さんからもらった日記帳なんだから。あいつは絶対何かを誤解している。そして僕はあいつが嫌いだと確信した。




――△月○日

今日はずっと兄さんと一緒だった。無性に落ち着かなくて、心臓がうるさかった。兄さんに聞こえていないといいな。





――△月×日

僕は兄さんをどう思っているんだろう。
兄さんは僕をどう思っているんだろう。





――△月△日

(今日は何を書こうかな…)

なんていつものように僕は机に向かっていた。

頭に浮かぶのは、また兄さんのことばかりだ。


「…なあ、ヒューバート」


突然名前を呼ばれて振り返ると、そこには兄さんが立っていた

「に、兄さん!?いつ入ってきたんです!ノックくらいしてくださいっ」

「したよ!けど、ヒューバートが返事してくれないから…」

「だったら勝手に入っていいと思っているんですか?」


全く、あなたって人は…
はは、と笑う兄さんについため息が出る

そしてその数秒後、僕はあることに気付く

今、この狭い(って言ったら宿屋に失礼ですけど)部屋に兄さんと2人きり…


そう変に意識したら、何だか急に恥ずかしくなってきて兄さんの顔を見れなくなった

だからとっさに俯いた


「…ヒューバート?」

「な、何です」

「耳、赤いぞ?」


そ、それがどうしたんですかと聞くと、兄さんは僕に近付いてきた

そして、グイと僕の顔を上げた


「顔も真っ赤じゃないか!」


そう言うやいなや、兄さんの顔が近付いてきて僕の額と触れた


だめだ…

堪えられない…


「ヒューバートっ熱があるぞ!今シェリアを「結構ですっ!」

ふいに出た大声に、兄さんは愚か、僕自身も驚いた


「…お前、今日どうしたんだ?おかしいぞ?」


それは兄さんのせいですよ、なんて言えるはずがない

そもそも、熱だって兄さんが近かったからで…

僕はひたすら沈黙を続けた

それに痺れを切らした兄さんが観念したのか、僕のベッドに近付いて思いっ切りダイブした


「ちょっと、何やってるんですっ」

「ん?ヒューバートの熱が冷めるまで、俺が看病してやろうかと思って」

「ふざけないでください!だいたい、あなたが居る限り熱は冷めませんから」


そう口にしてから、はっとして、両手で口を覆った

僕は今、とんでもないことを口にしてしまった


「ヒューバート…それは、どういう…?」

「ああもう!忘れてください!僕は寝ます。兄さんは出てってくださいさようならおやすみなさい」


ベッドで寝そべっていた兄さんを起こし、ぐいぐいと押してドアまで運ぶ


「おい、ヒューバートっ!まだ話が…」


おやすみなさい、と同時にドアを閉めた。

全く、兄さんと居ると調子が狂う




ああもう、今日の日記は明日まとめて書くことにしよう

そう思って机の上に開きっ放しだったノートを見る

すると、今日の日付のところに書いた覚えのない文章を見つけた




――△月△日

明日も守ってやるからな。




兄さん…だ

一体いつのまに…

急いで書いたのか知らないが、最後の方の字が歪んでいた。

全く、油断も隙もありませんね

油断をすれば、僕があなたに溺れてしまいますからね。

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