私の存在意義

□壬
1ページ/13ページ


男はゆっくりと一と穂村の方を向く。

「何のつもりだ」

「お前らに警告する。つーか、もうアンタしかいないけどね」

一は真剣な顔でそう言った。

慌てて男が後ろを振り返ると先程まで人が座って場所には達磨が置かれていた。

「こ、殺したのか?」

「ねぇ、顔見て」

無邪気に笑った一は男に駆け寄り、鏡で自分の顔が見えるようにしてやる。

男の顔には赤い点線が横に轢かれ、鼻の所に“キリトリセン”と書かれていた。

「お前の顔の切り取り線。次はその線に沿って頭部を……真っ二つ」

男はビビる。

「二度と僕らに逆らわないようにと全レベルへ伝えろ」

「なっ、何を……うぐっ」

一の言葉にビビりながらも反論しようとしたがそれは途中で阻まれた。

犯人は穂村である。

穂村はゆっくりと男に近寄る。

男は苦しそうに喉の辺りを引っ掻いている。

「あんまり調子に乗ってると、あたしも怒るよ?」

男がなぜ苦しそうなのかというと穂村が念動力を使って男の喉を押さえつけているからだった。

「(わ、分かった! 伝える、伝えるから助けてくれ!!)」

男は喉を押さえられ声が出せないので心の中で叫ぶ。

「穂村、どう?」

「伝えるって」

そう言って穂村は念動力を解いた。

男はようやくまともに呼吸ができるようになる。

「……ね?」

同意を求めるように穂村が男を見ると男はビビりながら何度も頷いた。

一はそれを見ると狂ったように笑い出した。

そしてぴょんぴょんと飛び跳ねる。

男は怯えたようにそれを見つめていた。




















家に帰って来た穂村はベッドに飛び込んだ。

「だから力使い過ぎるなって言ってるのに……」

「……うん」

横になったまま穂村は頭を押さえた。

「……寝れば、大丈夫だと思う」

「そっか。じゃぁおやすみ」

一は穂村の頭を優しく撫でた。

「十一……」

「ん?」

穂村が消え入りそうな声で名前を呼ぶと一は反応する。

「……大好きだよ」

そう言うと穂村は夢の中に落ちていった。

「僕も」

一はそう言うと静かに部屋を出ていった。





















次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ