私の存在意義
□丙
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〜♪
「はい、もしもーし」
『穂村はいつから警察にいるんだ?』
穂村が電話に出ると瀬文がそう言った。
「はい? んー……1、2年前くらいですかね。それがどうかしました?」
『……お前は、“神の手を持つ男”の話を知っているか?』
瀬文の言葉に穂村は「髪の毛? そりゃほとんどの人が持ってるんじゃないですか?」と首を傾げる。
『神の手だよ。なんでも細胞を再生させる能力らしいんだが』
「あ、神の手ですか……心当たりないですね。細胞を再生ってもしかして治癒とかそういった話ですか? あぁ、志村さんのためですね」
話の内容から穂村は瀬文の目的を予想した。
そしてそう尋ねると若干間を開けて瀬文が頷く。
「すみません、知りません。あの、瀬文さん……あまり無茶しないでくださいね?」
『は?』
真剣な穂村の言葉に瀬文は首を傾げた。
「瀬文さんにとって志村さんが大事なようにあたしたちにとっての瀬文さんだって大事な仲間なんですから」
『……何か分かったら教えてくれ。』
瀬文はそう言って電話を切った。
「瀬文さん、誰からその情報もらったんだろ?」
穂村はゆっくりと目を閉じて耳を澄ませた。
「……ダメだ。もう瀬文さん一人でいるし、何話してたかなんて過去のことは分かんないや」
ため息をつくと、穂村は帰っていった。
次の日。
穂村たちに下された指令は張り込みだった。
「はい」
「何すか? 今、ずんだ餅食べてるんですけど」
「今、宿題やってるんですけどー」
何かを差し出す野々村に当麻と穂村は不満を漏らす。
「お前ら仕事中だろ」
「冗談ですよ……で、何ですか?」
穂村は立ち上がって野々村の下に行き、一枚の紙を受け取った。
「地図?」
「張り込み。午後一時から張り込んできて」
「何の張り込みっすかぁ?」
穂村が受け取った地図を当麻は横取りする。
「分かんない、見てれば分かるって……上が」
「上?」
「違いますよー」
文字通り頭上を見上げた当麻に、当麻の後ろから地図を覗き込んだまま穂村が注意する。
「偉い人。っすっごーい偉い人からの命令。頼んだよ」
流石に仕事なので断れず、当麻は「えー」と言いながら仕事に向かった。
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