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□あいらぶゆー
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「あら、詩紋殿。今日はお早いのですね」
「おはよう藤姫。
 今日は目覚めがよくて。」
「左様に御座いますか。」

こっちの世界に来て大夫と時間が過ぎた。
ついこの間まで紅葉が綺麗だと言っていたのに、もう山は雪化粧をしている。
今日も冷たい風が一段と強く吹いている。

「あぁ、そうでした。
私、詩紋殿に伺いたいことがありましたのよ。」

難しい顔をして首をかしげる、ボクより年下のまだ小さなお姫様。
しっかりしていて、誰にでも優しくて…一生懸命な彼女。
自分より小さなお姫様をボクは好きになり始めている。

「あいらぶゆぅー、とはなんですか?」

藤姫が眉間にしわをよせて僕に聞いてくる。
またきっとあかねちゃんがおかしなことを教えたのかな?

「イノリ殿が「あいらぶゆぅ」って」
「イノリくんが?」
「今度意味を教えてくださるって仰ったんですけど…」

あぁ…
絶対あかねちゃんあたりが吹き込んだに違いない。
意味も確実に教えていると思う。ため息をついて藤姫をみると不安げな瞳

あぁ、無防備。

そんなに可愛い顔していると、
ここにいる優しい仮面をかぶった獣たちが君をたべにきちゃうから

「そう言うときはね」

君を飢えた獣から守ってあげる。
守らなくちゃいけないんだ

「僕が藤姫を守るからね?
今はその言葉の意味は知らなくていいよ。ボクがきちんと教えてあげるから」
「?」
「イノリくんに意味聞いちゃダメだからね?」

君は優しいから
君は弱いから
君は儚いから

君は僕がまもるから

へんな男につかまったりなんかしないで?
世間は獣ばかりなんだよ?

「うーん…そういう僕もなのかな?」

君のナイトになるから。

だからいつか

あいらぶゆーを囁く日
君は、みーとぅと笑ってください

そんなの夢物語と知っていても

ボクはいつかを望むんだよ

これってワガママなのかな…?

〜 END 〜

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