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□雪ウサギ
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寒椿が雪に染まる。

神子様のために用意した庭園は、すっかり白銀の世界に変化していた。

「藤姫〜おまえも来いよ!」

神子様と詩紋殿、そしてイノリ殿が朝早くから雪を見てはしゃいでいる。
頬を赤くして戻ってきたイノリ殿が私の手を掴んで庭園まで誘ってくださる。
殿方に手を握られるのなんて父上以外では初めてでおもわず顔が熱くなる。

「ぁ、あ、あのっ」
「わっ、わりぃ!」

私の反応に顔を赤くし焦って手を離すイノリ殿。
どうすればいいかわからなくて思わず俯いてしまった。

そうだ…

あの日から。
あの寒い日から私の胸はどんどん痛みを増していく。

掴んだ貴方の手があたたかくて大きくて…

貴方の表情が何故だかずっと…
忘れられないのです。
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