今昔を生きる少女
□第捌話 頬を伝う涙
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牢の外には数人の死神…、つまりは見張りがいる。
―――ルキアもここに居たのだろうか。
この閉じられた、狭い空の下に。
「シケたツラ下げてんじゃねーよ」
びくり、久遠は肩を揺らした。
ゆっくりと現実を確かめるように久遠は振り返る。
鉄格子の外にひとつの影がある。
「グリ、ムジョー…」
「よぉ、らしくねーな。一カ所に留まるお前は」
座っていた床から腰をあげる。
驚愕の瞳で、闇に包まれたままのグリムジョーを見た。
「貴様…どうやってここへ…!」
優しい月明かりが、二人を照らした。
さっと、血の気が引いていく。
「…何だよ」
久遠はグリムジョーを見て愕然とした。
「腕は…どうした……!左腕は…!」
久遠の瞳が揺れ、体が震え出した。
微かに汗がにじみ出す。
グリムジョーの左腕が在るべき場所になく、装束が風とともに揺れていた。
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