今昔を生きる少女
□第捌話 頬を伝う涙
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牢の中の久遠は白い着物に身を包んでいた。
白い肌に白い着物。
細い四肢が、余計に彼女を艶やかに魅せた。
牢には、彼女を訪ねてほとんどの隊長、副隊長がやってきた。
「左陣…!」
もう日が暮れかかった頃だった。
残された面会時間はあと僅かしかない。
「久しいな、しかし再会がこんな場所とは…」
柵格子の向こう側で、苦笑混じりに彼…狛村左陣は言った。
「左陣…私は現世で…!」
思い切って久遠は左陣に伝えようとした。
東仙に会ったことを。
「皆まで言うな…。主が誰に会ったのかも何を言ったのかも…、全て聞いている…」
「…左陣…」
「礼を言おう」
久遠は首を横に振る。
真っ直ぐに左陣を見たその瞳が、あまりにも純粋であまりにも綺麗だった。
「何も、伝わらなかったのだ…」
慰め方も分からない。
素直にそう思った。
「そんな顔をするな、藤堂…」
左陣はその言葉を最後に牢から出ていった。
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